さらば「ポッド・ゴッド」よ
天翔る船――パシャが言うには「大きな筒」であるわけだが、それが「ポッド・ゴッド」の北側に浮かんでいる。
そして、この船に乗り込む面子は、まずデボンである。
パシャの指名でもあるし、空を往く船を操るとなればデボン以外には扱えないだろう。いやデボンにしても勝手が違うのだが、確実に他の者よりはマシだ。
「どうしてこんなことに……速度も大して出ないらしいし……」
明らかにズレた部分を気にしているが、艦橋とも言っても良い場所、その操縦席に収まると順調に慣熟していった。
バランスを崩さずに、北に船首を向けて進むことが出来れば、一応それでデボンの仕事は終わりだ。
そして「慣れている」事が、乗組員の条件であるならデュークもまた選ばれたことは自然な成り行きだっただろう。
デュークの役目としては、この船に乗り込み新たに与えられた直属の部下を率いること。そして北の集団に対応する先遣隊を指揮することが挙げられるだろう。
予定では切り込み隊長よりも複雑な役目を担うことになる。
それに何より、デュークの最も重要な役目は他にもあった。
「ここ!」
と、いったタイミングと北の集団の中核を見定めることだ。
これは戦術眼に優れたデュークにしか出来ない仕事だった。
その後、デュークと共に北の集団に対応するのはウェストとアイザックだ。
先の帝国との戦いでもコンビを組んでいた二人だ。デュークがいなくてもしっかりと兵達を動かせるだろう。
この二人ももちろん乗船する。
一方で「クーロン・ベイ」主席のシュンは乗船せずに、それ以外の兵の指揮を受け持つことになった。
これだけの数をまとめることが出来るのはデュークかシュンしかいないので、半ば消去法的な配置だ。
しかし兵の大多数を占める「クーロン・ベイ」から派遣された兵達を束ねる事が出来るのは、やはりシュンしかいない。これも必然と言って良いだろう。
そうやって男達の役割が決まる中――
~・~
「帰ってくるよね? 私はこう意味で『ダイモスⅡ』から離れても良い、なんて言ったわけじゃないのよ」
船に乗り込むパシャとマクミランにミオが拗ねたように声をかける。
いよいよ明日は出航――いや出発だ。
北の集団は「アイアンフォレスト」要塞址を一両日中には突破の見込みだ。
ギリギリの水際防御状態である。
「帰ってきますよ。というか危ない事しませんし」
「私もそのつもりです。私の仕事は終わった後の後始末ですし」
ミオの訴えに、パシャとマクミランが心配ない、と言わんばかりの気安さで声を返した。
ミオも「大きな筒」が何のために行くのかは教えて貰っている。
理屈で言えば、確かに二人は戦地に飛び込むわけでは無い。
それに戦いになるかどうかも……
「うん……そうね。いってらっしゃい。イブさんと何か用意してるわ」
「何だかもう、イブさんとは一緒に仕事した方が良いのかもしれませんね」
ミオの言葉にパシャが混ぜっ返し。マクミランは、コホン、とわざとらしい咳払いで応える。
そしてミオに見送られ、二人は「ポッド・ゴッド」をあとにした。