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こんなこともあろうかと!  作者: 司弐紘
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天翔る

 自然と絶叫を挙げていた五人の視線の向きは上。

 つまり上空に何物かが出現――いや出来上がりつつある。


 屋台、荷車、乗り合い車に運搬車。一気に数を増やしたパシャの動力を組み込まれたそういった機械が、上空に集まってきているのだ。

 その中には当然、人が乗っている物もあるが、


「あ、今のうちに降りてください。緊急事態です。これから全部合体しますので」


 パシャは片手を挙げながら、この無茶苦茶に巻き込まれた人達に声をかける。もちろんそれで理解出来る者は誰一人としていなかった。

 ただ、このままでは酷い目に遭うことは本能的に察知したのだろう。


 こけつまろびつ、組み合わさりつつあった乗り合い車から脱出した。

 そういった被害者を助けながら、五人はまだ変化を続け、車達が組み上がってゆく様を呆然と見上げていた。


 その内に「ポッド・ゴッド」周辺の機械はある程度集め終わったのだろう。

 変化が収まってゆく。そこで全体的なフォルムを予想するなら……


「船……?」


 「クーロン・ベイ」の港に入港することで、シュンの方が接することが多いのだろう。それは確かに外洋での航海にも耐えられる竜骨(キール)を持った外洋船だった。


 ただし、その船は宙に浮いている。


 パキパキと音を立てながら、さらに変化を続ける船。

 そこに「クーロン・ベイ」方面でも運行中だった乗り合い車を始めとした機械たちが集まりつつあった。


 被害者も増加しつつあるのだが、誰からも声が上がらない。

 むしろ、偶然とは言えこのとんでもない光景を一等席で見ることが出来たことに、感謝している者までいたほどである。


 そう。

 確かに、空中で船が出来上がってゆく様子はとんでもないのだが――


「……これで船が完成したとして、それでどうなると言うんだ!?」


 いち早く正気に戻ったアイザックが、その点に気付いた。

 元々は、北からの集団にどう対応するか、という目的があったはずだ。


「集団を船に乗せるとか……」

「いや、それでどうにかなる規模では無いはずだ」


 マクミランがその活用法を予測するが、ウェストがそれを否定する。

 この船に集団を乗せても、ほんの一部だけだ。それにそもそもどうやって乗せるのかという問題がある。


 確かに、空中に浮かぶ船は目を奪うだろう。

 だが、それだけでは……


「もうすぐ完成です。デボンを呼んできて貰えますか? アイツじゃ無いと扱えないと思いますので」


 そんな五人の不安をよそに、パシャは何の問題も感じていないのか、明るい声を出した。

 たまらずデュークが声をかける。


「い、いや、確かに船を扱うならアイツなんだろうけどさ」

「船?」


 パシャが意外な言葉を聞いたとばかりに三白眼を見開いた。


「これは船じゃ無いですよ。そうですね……まぁ、大きな筒だと思ってくだされば良いかと」


 その答えに、この場にいる全員が言葉を失った。

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