マクロではなくミクロへ
「集団の大体の動きはわかった。ここまでやってくれたことには頭が下がるが、これだけではなぁ……俺が思うに――」
とりあえず「ポッド・ゴッド」の作戦指揮場となった、参事会の建物でデュークは眉を寄せていた。
「思うに?」
すでに民兵を率いて駆けつけていたシュンが身を乗り出した。
その他にはウェスト、アイザック。それにマクミランが顔を揃えている。
「これは戦争だと思って対策する必要があるのか? ってことだ。俺は……疫病の類いじゃ無いかと思ってる」
「疫病か……確かにそういった捉え方も出来るだろう。何しろ理性がある動きには思えない」
デュークの意見にウェストが賛同した。
「しかし、疫病ならあんな動きにならないのでは? 伝染する方向……いや、それが正しい言い方なのかはわかりませんが、少なくとも疫病に対する対策では後手に回ると考えます」
「それに同意だ」
アイザックがそれに反対意見を挙げ、シュンもそれに続く。
こちらも確かに頷ける部分が多い。原因はともかく、この集団は間違いなく攻撃の意志を持って南下しているのだから。
「……相手の思惑が謎な以上、その対策も後手後手に回る可能性は高いかと。つまり……疫病対策のように先に集団が発生した原因を考えた方が、結局は迅速な対応が出来る――そういうことになりますか」
マクミランがどうにかこうにか、両方の意見をまとめた。
それに対して、再び意見が飛び出そうとしたが――
「――『クーロン・ベイ』には悪いんだが、これでも俺は情報不足だと思うんだ。『クーロン・ベイ』、ミロっていう奴だったかな。確かにとびきり優秀なんだろう。ただ情報の集め方が、この場合ズレちまったんだな」
デュークが強引に断定した。
「動きがわかるからこそ、こうやって対策を練る余裕が出来たんだが、ちょっと集まってくる情報の単位が大きすぎるんだ。俺としては、そんな状況でも集団に巻き込まれないで、その場に留まった奴の情報が欲しい」
さらに要求を具体的にしてみせる。
「……それで有効な情報が集まるかもしれんが余裕はあるだろうか?」
だが、これにはウェストも異議を挟み込んだ。
その危険性は、この場にいる全員が共有している。
そんな緊迫した空気の中で、デュークはさらにこう告げた。
「ぶっちゃけると、このままの状態で『アイアンフォレスト』を突破されると、俺としてはどうしようもない。被害を減らすことは出来ると思うが、それだけだ。兵士達が全員死ぬという前提でな」
そして、この意見には反対意見が出てこない。この未来図は全員が共有しているのだ。それだけの危機が迫っていると。
「――シュン主席」
「何か?」
突然にマクミランがシュンを呼んだ。
「北には私の知己が多くいます。今は交流が途絶えていますが……」
「やってみよう」
シュンは即座に了承した。北にいるミロの部下にマクミランから提供された伝手をたぐらせる。
他にやりようが無いのだ。