表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
こんなこともあろうかと!  作者: 司弐紘
82/107

見積もりの甘さ

 「クーロン・ベイ」内での派閥争い、それによって発生した暗闘は終わった。

 革新派の勝利によって。


 保守派に与していた衛兵達も一斉に降った。保守派が権力を有していてはじめて、彼らの安全と出世は保証されるのだ。忠誠心を捧げている場合ではない。


 もちろん、自分達が権力を失う事が認められないのか――あるいは想像できないのか、悪あがきする者達もいる。

 だが、すでにそういった面々は少数派なのだ。


 ごく平和裏に彼らは力を失ったのである。そして「クーロン・ベイ」を取り囲んでいた農民達も市内に招き入れられた。もちろんその時には戦うべき相手もいない。

 ただ都市に遊びに来ただけ、とも言い換えることも出来る。


 しか、大人しく、というわけには行かなかった。

 何しろ彼らを待ち受けていたのは、新酒の大盤振る舞いなのだから――


                ~・~


「こんなこともあろうかと、サービスを含めた優先券を用意してあります。これでなんとかするしかないでしょう」


 しかし新酒の評判の良さが想定以上だったのである。

 計算ではかなり余裕があるはずであったのに、底が見え始めたというのだ。


 そこでパシャは将来の顧客に不満を抱かせないためのアイデアとして、優先引換券を用意したと言い出したのだが……


「それは……まぁ、口約束じゃないだけ良いけど、結局タダじゃないんでしょ? それで収まるかな?」


 と、ミオは率直に疑問点を口にした。

 すでに祭り上げられた状態ではない。無茶苦茶になる前に、しっかりと巨船の「首」を畳んで二人を降ろしたのは、ダスティにとって今日最後の良い仕事と言えるだろう。


 そう。その他はおしなべて無茶苦茶である。


 「クーロン・ベイ」の港は酔い潰れた者達がまさに死屍累々と積み重なり、動ける者は、それでもなお新酒を求めて千鳥足で「クーロン・ベイ」を徘徊している。


 この街でドラスティックな革命が成し遂げられたとは考えられない状態だ。

 ……いや、相応しいと言えるのかもしれないが。


「収まらなかったら、俺がなんとかするよ! なぁに、皆で一緒になって海に飛び込めば済む話だ! アハハハハハ!」


 すでに南の巨船と合流済みのデュークが良い気分になって落城寸前であった。

 もちろんデボンは新酒に頼ることなく、自然の摂理に従ってすでに深い眠りの底についている事は言うまでもない。


「……仕方ないですね。マクミランさんに助けて貰いましょう。新酒をなんとか持ってきてくれば良いんですけど? これ『クーロン・ベイ』にツケても良いんですよね?」

「そうなるって話は聞いてるけど。……私としては恥ずかしい目に遭った分も請求したいぐらい」


 そう言いながら、ミオはパシャが《《通信機》》を通してマクミランとやり取りするのを眺めている。


 何かおかしい――そんな思いがミオの脳裏をよぎったが、結局は大騒ぎを続ける「クーロン・ベイ」の喧噪に紛れてしまった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ