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こんなこともあろうかと!  作者: 司弐紘
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決着

 かくして「空白」と「混乱」が同時に「クーロン・ベイ」を覆った。

 そのため普段なら各保守派の邸宅の警護をしている衛兵達は、北の農民達の集団に対抗するため出払わざるを得なかった。


 農民の集団が「クーロン・ベイ」に雪崩れ込めば、もはや保守派も何も無い。いや保守派の邸宅は一番の標的される。

 そしてそれは保守派の私兵と化した衛兵にとっても同じ事だ。


 さらにその集団に一心不乱のデュークまでいるとなれば――


 邸宅を守っている場合ではない。

 集団を阻止するために動くか、それとも逃走するか。


 「混乱」の中で、判断を迫られるのである。

 「空白」とは「クーロン・ベイ」中央部に生じた、人がいなくなる事を指しているわけではない。


 こういった衛兵から判断力を奪うような状況。

 それもまた「空白」であったのだ。


 だが「クーロン・ベイ」で起こることを予想できていたのなら?

 少なくとも「混乱」には巻き込まれる事は無いだろう。そして「空白」になる暇もない。


 その条件を満たした革新派の面々は夜の「クーロン・ベイ」の夜に勇躍した。

 革新派に与する衛兵達もいる。彼らが警備のいなくなった保守派の邸宅に乗り込んだのだ。


 保守派はそれに逆らう術も無かった。

 これは正々堂々の戦いではない。これは暗闘なのだ。


 そして、それを先に仕掛けたのは保守派なのである。

 ほとんどが大人しく縛に就いた。あとから適当な罪を被せられる事も理解しているのだろう。その表情は諦観に満ちていた。


 反抗する者も当然いたわけだが、それは今までの雌伏の間――いや、長らく保守派と戦い続けた事が研鑽の役割を果たしていたのだろう。

 あるいはそういった鬱積が彼らの士気を高めたのか。あっという間に組み伏せられてしまったのだ。


 そして、その圧倒的な士気の差、あるいは志の差が今、ユウキ卿から全てを奪おうとしていた。


 シュンが掲げる剣の切っ先が光る。


「すでに大勢は決している」


 シュンの持つ剣は儀礼的な意味合いではない。

 彼は実際に衛兵から研鑽を重ね、北の帝国との戦いにも加わっている。


 (いにしえ)の先祖の武力によって今の地位があるユウキ卿。

 自らの力によって今の地位にあるシュン。


 対面(サシ)で向かい合ってしまえば。武力だけの問題ではなく、まず人間としての在り方に差があるのが明らかになってしまう。

 ユウキ卿に優れた点があるとするなら、シュンと向かい合うことを避け続けたことだろう。


 ユウキ卿はわかっていたのだ。

 自らが劣っているということを。


 そして、シュンに見下ろされたことでユウキ卿はそれを受け入れたのだ。

 多くの予想に反して、ユウキ卿は抵抗しなかった。


 ただ粛々と、革新派に身柄を捧げたのである。

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