ダイレクト宣伝工作
「さぁ! 来たぜ来たぜ『ポッド・ゴッド』から! 新商品のお知らせだ!!」
夜空にダスティの声が響く。
すでに巨船は「クーロン・ベイ」の港、その最大ふ頭に横付けされている。
その瞬間、太陽が昇ったかのような強烈な光がさらに巨船を浮かび上がらせたのだ。もちろん、この光の正体はパシャの仕掛け。
これがダスティが直前に巨船に組み入れることを要求した仕掛けの正体でもある。
そしてダスティは、自らの要求に応えるように、これまたパシャよって組み込まれた拡声器で口上を並べ始めた。
最大限に目立ちながら。
「流行に敏感な人なら知っているだろう! 『ポッド・ゴッド』は最近、次から次へと新商品を出させて貰ってる! その中で真っ白なケーキ! この『クーロン・ベイ』でも大人気だ!」
ダスティは煽る。
実に生き生きと。
「今日はそのケーキを作ってる店長さんがお出ましだ! 新商品の宣伝にやってきた! それがこの人、イブさんだ!!」
今一度、高い場所でライトアップされるイブ。
何とか笑顔を保っている。
「そして、隣にいるのは新商品を売り出す店の店長だ! 名前はミオ!!」
続いてミオがライトアップとコールを食らう。
間違いなく人柱だ。
「女が二人~? それも甘い物? 俺には関係ないと思ってる野郎共ーー!! ミオの顔に見覚えは無いかい? そう彼女はあの『ダイモスⅡ』を若いながらも仕切っている、しっかり者だ! ということはだ……」
そこでダスティは大きく息を吸い込んだ。
あるいはそういった間がより必要だったのは、ミオであるかもしれない。
ダスティはそういった感傷を振り払うように、口上を続ける。
「……今回の新商品は~~酒だーーー!!!!!!!!」
「うぉおおおおおおお!!」
発表と同時に港からも歓声が上がる。
何事か!? と、詰めかけた市民や衛兵が戸惑う中、巨船に取り付く者が現れた。
実は「クーロン・ベイ」には、「ポッド・ゴッド」から先にこういったサクラが送り込まれていたのである。
さらにダスティの口上は続く。
「そして今日は二人の店長お墨付きだ!! 新しい酒の宣伝代わりにタダで振る舞おうっていう心意気! つまり……タダ酒だぁあああああああ!!!!」
ダスティの叫びが響いた。
そして巨船を形作っていた、屋台や荷車はサクラ達によって分断され「クーロン・ベイ」の市民達に本当にタダで酒を振る舞い始めたのである。
当然、次に現れたのは大混乱。
新酒の魅力、その冷たさと飲みやすさが市民から理性を奪ったのである。
そしてそれは巨船の警戒に回された衛兵達も同じ事で、気が付けば市民達と肩を組んで大騒ぎを始めている。
衛兵としては、もう役には立たないだろう。