巨船
会議、と言うよりもデュークによる作戦の押しつけによって「ポッド・ゴッド」が動き始めた。何しろこれからデュークの指示によって巨大な船を作らなくてはいけないからだ。
とは言っても、一から造船していれば時間がかかりすぎることは言うまでもない。
デュークの指示はパシャの荷車をまとめて船のように見せかけろ、という指示だった。
この時、デュークは「ポッド・ゴッド」内で活躍していた屋台については知らないので、それは勘定に入れていなかったが、当然屋台も集められることになる。
さらに新造された屋台に、新酒運搬用の荷車も動員された。
それを一つにまとめるのは、当たり前にパシャである。
集められたそれらをフレームで繋ぎ合わせ、取り付けられていた装置を調整する。
一晩でこれらをやってのけて、翌朝には「ポッド・ゴッド」近くの海に、そういった「土台」が浮かんだのである。
「ポッド・ゴッド」念願の巨船……のようにも見えた。
砂浜ばかりで港湾施設からはそっぽを向かれていると考えられていた「ポッド・ゴッド」にとっては、まさに夢にまで見た、と言っても良い状態ではある。
「ダメですよこれは。大きな波や風でひっくり返ります。それにしたってもう少し上手く造れなかったものか……」
と、パシャは自省しながらも、そういった声に対してダメ出しを行った。
奇しくも三バカでスピードの向こう側を目指していたことが、良い経験となったようである。
それにパシャの「こんなこともあろうかと」はここからが本番だった。
土台の上に、いや土台全体を覆うようにしてパシャは布のようなものをかぶせた。
続いてその中にフイゴで空気を送り込む。
当然、その布は膨らんで行きたちまち、と言うほどでもないが海の上に見上げるような白い固まりが出現した。
「伸縮性のある布……と言えば良いんでしょうか? まぁそういったものが出来ていましたのでデュークの言うようなものは造れるな、と。ただこれはちょっと格好悪いですね」
言ってしまえば海の上に丸いものが浮いているだけ。
陸に上がったクラゲとさほど変わらない。
「後は着色でなんとか――そうだ! ダスティさんを呼んでください」
パシャがいきなりダスティを要求した。
さっぱりわけがわからなかったが、これは「ポッド・ゴッド」の一大事である。
参事会は遮二無二ダスティを海辺に連行すると、その身柄をパシャに差し出した。
当然、ダスティはいやがり、何かの仕返しか? と、逃げだそうとしたのだが、パシャの三白眼に見据えられ、ついには大人しくなった。
いや、積極的にパシャに協力することになったのである。