粛々と、だが迅速に
デュークが久しぶりに執政官に就任。
そういう流れかと思われたが、デュークがそれを否定した。
「別に戦う必要は無いでしょ。つまり俺が役職に就く必要も無い。相手の心を砕いてしまえばいいわけで」
デュークは飄々とそう結論づけるわけだが、
「すぉれがぁ出来れぇばぁ~世話はぁないのであぁ~る!」
コンゲがそう反論した。
ちなみに今は「ダイモスⅡ」の臨時会議から一晩明けて、いつもの会議室である。
現在「クーロン・ベイ」の状況。そしてこのままでは「ポッド・ゴッド」も危ういということまでデュークは説明されたはずだが、どうも皆が考えていた展開にはならない。
それに加えて相変わらずデボンまでが連れてこられているのである。
ちなみにパシャもだ。
何しろ皆が頼りのデュークであるから、傍若無人を絵に描いたような有様である。
「どうして僕まで……」
「俺もだよ。いったい何故連れてこられたのか……」
と小さくなっている、デボンとパシャである。
ちなみにミオは「どうぞどうぞ」とパシャを差し出してしまった。昨日、いやずっと行われていた改良荷車の暴走について怒っているのだろう。恐らく。
そんな二人を置いて、デュークとコンゲの交渉は続いていた。
「いやいや、それできると思うよ。ああ、十日ぐらい時間はかかると思うけど。それも出来ない?」
「ぬぅ! ぬぬぬぬぅうん!」
もはや言葉にもなっていないが、
「出来なくはない。だが、ギリギリだ」
と伝えたいことだけは理解出来た。
「――それで具体的には?」
「細かいところ詰めなきゃならんが、多分これでいけるだろうっていうのは、もうここに出来ている」
ウェストの重々しい声を躱すように、自分の頭を指さしながらデュークは軽く応じるが、その目がしっかりと据わっている。
「いけなきゃ、いけるようにする。俺はそうやってきた」
――一心不乱のデューク。
その異名が彼に奉られた意味を会議室の全員が感じていた。
デュークは全員の感覚の正しさを証明するように、作戦の説明を始めた。
それはシュンの救出と言うよりは、シュンにさらに働かせる内容であったが、
「出来るよな?」
「ぬ、ぬっ!」
コンゲとしてそう答えるしかなかったのだろう。
そしてコンゲもまた「クーロン・ベイ」に連絡係として潜り込むことになるのだが、元々そういうつもりだったので逆らいようも無い。
ただ、仕事が少しばかり多くなっただけ。
そして「ポッド・ゴッド」としては何をすれば良いのか、デュークが説明を始めると――
「なるほど。そういうことでしたか。実は《《こんなこともあろうかと》》用意していたものがあります」
パシャが声を上げた。
そして、何を用意していたのか説明する。
途端にデュークは笑った。そしてデボンと肩を組みながら「カカカ」と笑う。
「それは良いな。ようし五日で形にしてやる。頼むぜデボン」
「……なんで僕が……いや、これはこれで」
果たしてデボンの呟きには熱狂があった。かつてデュークに従い戦い続けた兵士達のように。