タイミング、バッチリ
そして「ポッド・ゴッド」の砂浜に帰ってきた三人を待ち受けていたのは、柳眉を逆立てたマリーであった。
ここしばらくマリーは「クーロン・ベイ」との折衝にかかりきりになっており、デュークが家にいないときも「外出できるまで快復したらしい」と楽観的に捉えておく事しか出来なかったのである。
それがデュークが改良荷車で暴走に至るまでのタイミングに合いすぎていたのである。
マリーは呆れるやら、途方に暮れるやら感情を右往左往させた。
そこでパシャが罪滅ぼしのように「ダイモスⅡ」に二人を誘うことになったわけだ。当然デボンも巻き込まれている。
結果としては、パシャの判断が正解だったのだろう。
変わらない人気のポッドチキンの焼き物。それによく冷えた新酒である。さらに店自体も冷えていた。
本店が繁盛していたのも当たり前の要因が揃っていたのである。
そしてこれだけのおもてなしが出来る店は「クーロン・ベイ」にすら無い。
「なぁんとぉぉ! うるぅわしきぃ! 店であることかなぁあああ!!」
よって、こういうことになってしまう。
当然、デュークのことも知っているし精神が弱っている事も知っている客もいたわけだが、コンゲという存在に気を取られ、次には何となく察してしまった。
何事か起きそうになっていることを。
何しろデュークは興奮状態で話し続けているし、彼が陣取るテーブル席の周りにはドンドン人が集まっている。
参事会幹部の面々、当然コンゲもそれに加わっていた。
やがてマクミランまでもが加わっている。
これで「ポッド・ゴッド」において軍事に覚えのあるものが揃った形になったわけだ。
その中でデボンはさっさと帰りたがったわけだが、何故かそれをデュークが止める。
その頃には、デュークもマリーから現在の「クーロン・ベイ」で起きている事を大体の所を聞いており、デボンは関係ないように思われたのだが……
一方でパシャも見られていた。
主にマクミランによって。
マクミランは相変わらず「ダイモスⅡ」に席を置いており、パシャとは変わらぬ関係でいるようだが、それでもまだ思うところがあるのか。
チキンを焼き続けるミオはそこを気にしたが、マクミランはそれ以上の動きは見せなかった。そもそもミオはデュークの事をよく知らないのだから、やがて焼く事に集中した。
様々な思惑が入れ乱れる「ダイモスⅡ」。
やがて営業時間が終わる頃になった時――
「それなら、なんとかなるかもな」
デュークはチキンを囓りながらそう告げた。
彼の復調は、まさにタイミングバッチリだったようである。