目標達成
今まで「ラスシャンク・グループ」を率いてきたイブに、ミオが敵うはずも無く。
生クリームを「冷やす」ことで新商品を作ろうとしていたことを自白してしまった。
昼の「ダイモスⅡ」の新たな目玉商品にする予定だったのである。
フルーツの使い方を学ぼうとしていたのは、それが本当に必要だったことと、甘い生クリームを使うことで新たなケーキを作り、ある意味意趣返しのつもりもミオにはあったようだ。
ダスティへのわだかまりは、まだまだ継続中というわけである。
そこで、いよいよイブが乗り出してダスティに、
「しっかり謝るように」
と、強く勧告した。ダスティはそれでもごねたわけだが、さらに参事会まで圧力をかけてきた。
と言うのも、生クリームの消費量が上がることは、これまた「クーロン・ベイ」からの輸入量の増加に繋がるわけである。
つまり「ダスティに頭を下げさせる」事は「ポッド・ゴッド」という街の意志になったわけだ。これではダスティを甘やかしていた有力者も黙り込むしかない。
それにそもそも、圧倒的に悪いのはダスティなのである。誰がどう見てもだ。
さらにはメイからも強く言われたことで、ケーンを伴い、さらにはイブも同行し「ダイモスⅡ」を訪れ、きっちりと頭を下げることになったダスティ。
あるいはメイと同じように店を持つことでダスティ自身も感じる部分があったのだろう。
最初はふてぶてしかったが、前店主スタディにも頭を下げる段階になって、いよいよダスティは本格的に泣き出してしまったのである。
その姿を見て、ミオも心の中で一段落付けることが出来たようだ。
参事会、というかマリーの提案で「ダイモスⅡ」「ラスシャンク・グループ」入魂の生クリームケーキを作る流れになったのも、先にダスティに頭を下げさせたからこそ。
それに罪滅ぼしの意図があったのかはわからないが、ダスティは積極的に新しいケーキを宣伝した。「ポッド・ゴッド」を訪れれば、こんな美しいケーキに巡り会えると。
それは「クーロン・ベイ」からの要求を裏切るようではあるが、原材料のほとんどが「クーロン・ベイ」で生産された物、あるいは砂糖のように製造を独占状態している物ばかりなのである。
これでは「クーロン・ベイ」も文句は言えなかった。
新しい物を作り出す街。それが「ポッド・ゴッド」。
生クリームケーキの期待値は跳ね上がり――さらには「冷やす」事の重要性を同時に知らしめるたことも大きい。
新酒販売に向けて伏線をまくことが出来たのであるから。
そして「クーロン・ベイ」において、空前の「ポッド・ゴッド」ブームが始まった。
しかしその実は「クーロン・ベイ」が潤うのである。
「ポッド・ゴッド」参事会とその協力者は仕事を達成したのだ。