マクミランの思惑
不意に父の話になったせいだろう。ミオの目に涙が浮かんだ。
イブの眼差しも優しくなる。
「……そういう事情なのは私達も理解しているつもり。だからダスティさんにはちゃんと謝ってもらうようにするから。この騒動が落ち着いたらタイミングを考えるわ」
「い、いえ、そこまでは……ただまぁ、これから先もお付き合いが続くのなら――」
反射的にそれを避けようとするミオだったが、お付き合いが続く、という仮定を口にしたことで、先ほどの「尋ねておきたいこと」が再び頭の中に浮かび上がってしまう。
「あ、あの、それならマクミランさんは?」
ミオは思い切ってそれを口にした。
この際、という心境は確かにあるし、何より「ラスシャンク・グループ」と付き合うことが増えるなら避けてはいられない部分だ。
「彼はね、私がずっとお世話になってるの。北からの引っ越しの時の印象が私には強いんだけど、その後『ポッド・ゴッド』に来てからも随分助けられたわ」
イブの返事はミオが聞きたい部分では無かったが、確かに興味のある話だ。
思わずミオはさらに踏み込んでしまう。
「それは……えっと、先の戦いでもマクミランさんが?」
「そうね。帝国に協力してた傭兵だったみたい。いえ、それも違うわね。北にいた頃、私達の部族が防衛のために雇っていたらしいの。それが帝国の膨張に伴って、自然とそういう立場になったみたい」
イブの説明に驚きながらも、ミオはそういったマクミランの経歴に納得するものを感じていた。それはミオが知っているマクミランの印象とも合致する。
「それで帝国が無くなって、その後部族を出た私達に彼が同行したのは……正直よくわからないわ。ただ私はとても感謝してるって事だけは確かよ」
だが、さすがにこの部分は納得出来ない。
それに今までのマクミランの言葉とも合致しない――嫉妬して「ラスシャンク・グループ」を出たという話は何だったのか。
「あの……それならマクミランさんはどうしてウチに?」
ミオは恐る恐るイブに尋ねてみた。
いや、この会話の流れでは聞かない方が逆に無理がある。
「あ、それはねパシャさんが理由。パシャさんに会ってみたいって」
あっさりとイブはその理由を答える。
それを意外と感じるべきなのか。それとも、そうだろうな、と納得するべきなのか。
ミオは悩む。
そして、その空白をイブは容赦しなかった。
「彼はどうしてもパシャさんを知りたかったのよ。どういう人物か。――彼が帝国に従軍してたのはさっき言いましたよね?」
「……はい」
ミオは緊張しながら、そう答えざるを得なかった。
そしてやはり、イブは容赦はしない。
「その時、パシャさん見たんですって。帝国の中でもブルーエルフ族に近い場所で」