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こんなこともあろうかと!  作者: 司弐紘
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戦いの記憶

 そう言われても、ミオは咄嗟にそれを理解出来ない。

 それにイブの説明もあやふやだった。


 北の帝国、と言われてもミオはその実態を知らない。その北の帝国から「来た」と言われたところで、どう受け止めれば良いのかわからないのだ。


 ミオは改めて、というか仕方なくイブに北の帝国について尋ねてみた。

 そうするとイブは頷き、


「そうね。実際、北に住んでいた私達もその実態を理解しているわけでは無いの」


 と、こちらもあやふやな理解であることを告げた。

 未だ「歴史」と言うほど昔の出来事では無く、だからこそ研究が進んではいないのだろう。「クーロン・ベイ」であれば研究が進んでいるのかもしれないが。


 だが、実際に北に住んでいたイブは、ミオよりも知っている事が多い。

 少なくとも北の帝国の指導者については。


「……ブルーエルフ族?」

「私達、妖精族に近い種族でね。青い肌をしてるの」


 そういった種族が北の帝国の中枢にいたらしい。

 今はブルーエルフ族がどうなっているのかははっきりしない。


 とにかくブルーエルフ族がいきなり力を付けて膨張し、他の部族達を圧迫し始めた。それに逆らうよりも従った方が賢明だと判断する部族がほとんどで、結果として国としてまとまってしまった。


 北の帝国が出現した経緯はこんな感じらしい。

 そして北が一段落すると、帝国は南進を始めた。目標は「ポッド・ゴッド」。


 特に戦略上の必然で「ポッド・ゴッド」を狙ったわけでは無い。

 恐らくはただの順番。「クーロン・ベイ」に向かうにあたっての通り道にあったのだろう。


 だが、その順番という安易な考え方が帝国を崩壊に導くことになった。

 何故なら「ポッド・ゴッド」には、デュークがいたからである。


 元は傭兵。その時彼は「ポッド・ゴッド」参事会により執政官に任じられており「クーロン・ベイ」からも派遣されていた兵を一つにまとめた。

 そしてそれらを巧みに運用すると、帝国が橋頭堡として築いた要塞「アイアンフォレスト」を奪取。


 それはだまし討ちとしか言い様がない戦術であったが、それだけに兵達の被害は皆無と言っても良い完勝状態だったらしい。

 だからこそ、なのだろうか。デュークは手を緩めなかった。


 奪った「アイアンフォレスト」を前線基地として徹底的に帝国を叩いた。

 寸断した。粉々にした。押し潰した。葬り去った。


 実態がわかりづらい帝国であったので、そこまでやらなければ安全だと確信できなかったのだろう。

 デュークは熱に浮かされたように戦い続け、現在は「ポッド・ゴッド」において、まだ若いのに隠棲している。


 それだけの戦いがあったことをミオは知らなかった。

 大人達が、口を噤んでしまうような……そんな戦いがあったのだ。


 ――「ポッド・ゴッド」にその爪痕が無くとも。

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