一蓮托生
「……私も忘れていました。事の起こりは『クーロン・ベイ』からの要求でしたね」
マクミランが苦笑を浮かべる。
「となると……いえ、まずはパシャさんの考えを聞きましょう。私はどうも酔ってしまっているようです」
それが新酒によるものか。はたまた何か別の要素によるものかはわからなかったが、パシャは小さく頷く。
「では……まずは普通にこの新酒の造り方をギルドに伝えます。この段階で参事会のお墨付きを貰った方が良いですね。これでさらに話が早くなる」
「あ、それはそうね」
参事会から現在の「ポッド・ゴッド」の危機を醸造ギルドに伝えた方が、ただの商売以上の意味があることに説得力が出てくるだろう。
ミオはいち早くそれを察した。
「ですが、全くの無料ではこれまた商売人としては問題があります。俺は製造した量に照らし合わせて、その一割分の儲けを払って貰おうかとも考えているんですが――」
「単純に、こちらに卸して貰う分の代金を勉強して貰う方法では?」
マクミランが復活して、パシャの想定に異論を挟み込んだ。
パシャはそれにも小さく頷く。
「はい。そのやり方でもいけると思うんですが、恐らく他の店にも割引することになるでしょう。大量に出荷することになると思われますから」
「ああ。それは間違いなく」
新酒が馬鹿売れすることは大前提だ。そしてそれは外れようのない予知だとマクミランは確信している。
そのために、作った本人であるパシャが引いてしまいそうになるのだが――
「――となるとですね。必然的に卸価格も割り引いていくのではないかと。そうなると儲けが減っていく……ような気がするんですが、どうでしょう?」
その辺りはさっぱりという感じのパシャである。
だが、その指摘は頷く部分があった。今度はマクミランが小さく頷き、
「確かに……これは私の仕事ですね。いっそのこと、ここにも参事会を絡める手もあります」
「そうなると、それは私の仕事にもなるわよね……頑張るから、諦めずに説明してね」
ミオの宣言にマクミランは笑みを見せて頷いた。
そしてそのまま、
「今、取りかかっている屋台にも、この新酒用の設備を増設した方が良いですね」
実は荷車を改造して屋台を作るのでは無く、一から屋台を作るプロジェクトも進行中なのだ。それに新酒用の設備、主に酒の搭載能力と冷却能力を強化したものを取り付けたいというのがマクミランの考えなのだろう。
だがパシャはその先も想定していた。
「屋台にこだわらず新酒用の運搬荷車は必要になると思っています。だって『クーロン・ベイ』にも売りに行くんですから」
「「な」」
ミオとマクミランは揃って声を上げた。




