コンゲの圧力
「クーロン・ベイ」の担当官の名はコンゲと言った。
確かに渉外担当ではあるようだが「ポッド・ゴッド」とは違って「クーロン・ベイ」において、渉外担当については複数いるらしいことをマリーは察した。
そして続けて、なんとか苦心してマリーがコンゲの言葉を汲み取ってゆくと、確かにコンゲは「クーロン・ベイ」においても「ポッド・ゴッド」擁護派ではあるらしいこともわかった。
すでに「クーロン・ベイ」では穀物の輸出制限という話も出ているようで、コンゲは、と言うかコンゲの所属している派閥がそれに待ったをかけているのが現状であるようだ。
コンゲの言葉を信じるなら、という前提付きだが、その点はアールが確認済みなのだろう。それに何よりコンゲの派閥が、ただの親切で「ポッド・ゴッド」に親切にしていたわけではないことが、コンゲの言葉に嘘が無い事を証明していた。
「ええっと、つまり……『クーロン・ベイ』に新たな産業を興したい、と?」
「さよぉうぅぅ」
粘っこい上に、よく聞いても言葉遣いが古めかしい。
それに偉そうなのだが、正直「それがどうした」と言うぐらいの異様さがあるので、マリーは苦も無くそれらをスルーした。
「そちらぁの~発展ぅん振りは~目覚ましぃものがぁ~ある~。我らもぉ、その恩恵にあやかりたいぃい~」
「それは……」
パシャさんのことを言っているのか。
そういった詳しいところまで知っているのか。思わずマリーはそれを確認しようとするが、
「それだけでは私共も動きようが無いんです~」
アールが間延びした口調で、マリーの言葉を遮った。
「ただ私共もそれで睨み合うのも本位では無いんです~。ですから今回は話が具体的なっても大丈夫なように~彼女を連れてきましたので~」
パシャという名前を出さずに、アールは交渉を進めてしまった。
マリーを生け贄に捧げるようではあったが。
「しかぁらばぁ~、我らもぉ、一歩ぉを踏み出そうとしようでは無いかぁああ。そちらにはぁ、こちらの穀物にぃ、付加ぁ価値ぉを生み出していただきたぁい~い」
相変わらず聞き取りにくいが、確かに欲求が具体化している。
確かに新たな産業の創設という外枠は変わって無いが、何故穀物限定なのか。
そこがマリーにはよくわからない。
そしてわからないままでは、このまま「ポッド・ゴッド」に帰っても、なんとも説明のしようがなくなる。
マリーは改めてその辺りの説明を要求し、今度はアールも止めなかった。
その要求にコンゲは悩んだようにも見えたが……
「やむを得ないかぁ。……それではぁここから先はぁ他言無用でお願いしたいぃい!」
と、うねうねしながら圧をかけてくるコンゲ。
マリーは自分の積極性をすぐさま後悔した。