クセが強い!
「ポッド・ゴッド」で採れる食物ばかりでは限界があるのだ。
フルーツでは腹が膨らまない。かと言って肉だけでは、養える人数に限りがある。
本格的に「クーロン・ベイ」がへそを曲げてしまうと「ポッド・ゴッド」は飢え死にしてしまうのだ。
参事会はその危険に気付いてはいるが、正直打つ手が無い。
さらに観光事業だけでは無く板ガラスの輸出についても超過状態だ。
しかしこれについては「クーロン・ベイ」にも問題がある。
観光とは違って、もはや板ガラスは「クーロン・ベイ」においても生活必需品になりつつある。「クーロン・ベイ」は輸入制限するどころか積極的に「ポッド・ゴッド」に板ガラスを買い求めたのである。
この板ガラスの“借り”で、今までは誤魔化し誤魔化しやってきたのだが――
「とにかく、もう一度交渉してみますよ~。俺の感触では『クーロン・ベイ』の担当官は何だか話が通じそうだし。ただね、マリー」
「は、はい」
名を呼ばれたマリーが、背筋を伸ばしてアールに返事をする。
「君も来るんだよ~。どうも向こうは『ダイモスⅡ』に興味があるみたいだしね。特にパシャさん」
「ぱ、パシャさん……ですか?」
それはそうなるだろう、という納得と、何故自分が? という戸惑いが一斉にマリーに襲いかかってきた。
「彼を交渉の場に出すわけには行かないからねぇ。君が代理人の形だ。彼はこっちの切り札になるかもしれない」
アールの説明に、納得するしか無いマリー。
気付けば、アイザックとウォルフもマリーを見つめていた。
「……が、頑張ります」
「では、決まりだ」
ウェストが重々しく告げた。
~・~
「クーロン・ベイ」との交渉の後、わずか三日後に会談の手筈が整った。
この時間短縮振りにも、パシャが噛んでいる。というか原因だ。
マリーは、全てを参事会に報告しているわけでは無いが、内緒にしていること全てが裏目に出ている気もしている。
そして今回も宙に浮く荷車で「クーロン・ベイ」に向かい、その庁舎で恐らくは「クーロン・ベイ」の渉外担当官と面会することになった。
改めて、この環境の変化に違和感を覚えるマリー。
こんな世界だっただろうか? と。
そういう思いを抱きつつ迎えた「クーロン・ベイ」との会談。
現れた担当官は、どう考えても曲者だった。今までのマリーの煩悶を吹き飛ばすほどに。
魚人種族で、黒くつかみ所が無い印象。
それでいて左右の目が、青と黒で違うという異様さ。
「こんのぉたびわぁぁぁ、よくそぉ、参られたぁ~~」
そして粘り着くような語り口。
思わずマリーは同行しているアールを睨んでしまった。
どういう感触で「話が通じそう」と考えたのか、と。




