追い詰められた参事会
「ダイモスⅡ」。それに「ラスシャンク・グループ」。
この二つを両輪にして「ポッド・ゴッド」は田舎町から観光事業によって発展してゆくリゾート地へと生まれ変わりつつあった。
発展には不向きと目されていた、街を取り巻く長い砂浜はレジャーには最適であったのだ。
「ラスシャンク・グループ」にはそもそも、そういう目算があったのか「サンダーフェニックス」を中心として、砂浜を開発済みだ。
そして、それに合わせたような「ダイモスⅡ」系列店。具体的には屋台なのだが、それらが提供する「冷たい」飲み物。
これが観光客をさらに引きつけたのである。
もちろん、それらが悪いわけでは無い。
だからこそ誰もが幸せになると考えたに違いないのだが……
「いつの間にこんなことになった!」
参事会における定例会議で、副議長であるアイザックが甲高い声を出した。
豹人種族で、牙を剥き出しにしている。
「落ち着け」
と、アイザックを諫めるのは象人種族の議長、ウェストだ。
その声は頼もしいのだが、それで事態が解決するわけでは無い。
「あ~、やっぱりわかりませんね。というか原因が判明したところで、それを止めさせるわけにはいかんでしょうし」
そうやって少しは建設的な意見を出すのは内務担当のウォルフである。
狼人種族で、結構な年のはずだがあまりそれを感じさせない。
ただ、言葉の端々からは苦労が滲んでいる。
「ですが~、僕に回されてもどうにもならんのですよ。『クーロン・ベイ』からの注文は嫌がらせに近いものがあると思うんです~」
と返すのは渉外担当のアールである。
栗鼠人種族で、最近はもっぱら「クーロン・ベイ」からの圧力を躱し続けていた。
実際、今まで圧力を躱せていたのはアールの、こののらりくらりとした対応によるところが大きい。
だがそれも限界に来ている。
「……で、では、どうしましょう?」
と声を上げたのはマリーだ。「ダイモスⅡ」の発展著しく、それに伴ってマリーも参事会での立場が強くなっていた。
だからこそ、この会議にも出席している。
それによってますます貧乏くじを引く様なハメに陥ってしまっているのは、皮肉と言えば皮肉だ。
だがそれでも現在、「ポッド・ゴッド」が陥っている危機に対して知らんぷりも出来ないでいる。ある意味では、それは「ダイモスⅡ」のせいでもあるからだ。
つまり何が起こっているかというと「ポッド・ゴッド」は儲けすぎているのである。現在進行形であることが実に悩ましい。
つまりは圧倒的な黒字。それによって割を食っているのが「クーロン・ベイ」というわけだ。「クーロン・ベイ」の金が「ポッド・ゴッド」に流れすぎている。
そして「ポッド・ゴッド」は穀物に代表される食料については「クーロン・ベイ」に依存しているのだ。
昔も現在も、である。
もし、「クーロン・ベイ」がへそを曲げてが料輸出停止に踏み切ったら――遠からず「ポッド・ゴッド」は滅びる。