時の流れるままに
ミオの持つ圧倒的な自信。「冷やす事が出来る」という圧倒的なアドバンテージに加えて、それを有効に活用したフルーツジュースのサービス。
昼間の「ダイモスⅡ」を上回るサービスを提供出来る店は「ポッド・ゴッド」には存在しない。いや「クーロン・ベイ」を含めても唯一だ。
さらにミオは口にしないが、パシャの「店全体」を冷やす考えが実行されれば昼間だけでは無く、夜の「ダイモスⅡ」も含めてはさらに繁盛する事になるだろう。
それならば、一見ライバル店とも思える店にも便宜を図って「ポッド・ゴッド」を訪れる人を増やした方が良い。
そしてそれは「ポッド・ゴッド」を潤すことになる。
一瞬でミオもそこまで考える事が出来たわけでは無い。
ただ、長い間にパシャのとんでもない技術革新、さらにはマクミランの手腕を肌で感じてきたミオだ。
何となくではあっても、そこまで考えが及ぶようになっていたのである。
そしてそれはメイも同じだ。立場が人を作るとはよく言ったものだ。
確かにメイ達は許されないことをしたが、それにこだわって頑なになってしまえば、そこで行き止まりになってしまう。
だからミオは忘れないまでも、過去のメイ達の振る舞いについてはスルーすることにした。
「――わかった。ユージさんに私から伝えておくよ。パシャさんも連れて行った方が良いわね。デボンさんがいれば今日中にでも出来るんだけど……」
あの二人は、また何事か企んでいる可能性が高い。
この際だから、確認しておいた方が良い、とミオは心の中で決意を新たにした。
「じゃ、じゃあ……助かるよ。……本当に」
「意地悪なこと言っちゃうとね。あなたには私が許すだろうっていう計算もあったでしょ?」
明け透けなその指摘に、メイが言葉に詰まる。
そこにミオが続けて言葉を叩き込んだ。
「許さなければ私が意地悪だ、とか言って憂さを晴らすことも出来るしね。それぐらいは強かでしょ、あなた」
「う……」
さすがにメイが全身を硬直させるが、ミオは笑顔を見せた。
「って、そんな事を想像しちゃうほど私も強かになったって事よ」
「あ……ああ、そうだな。それは確かに。……大人になったんだな」
メイが感慨深げに呟く。だが、そのミオの表情が一変した。
「だ・け・ど! ダスティは許してないから! あなたからも頭を下げさせるように言いなさいよ。後は言うがままのケーンだけだし」
「う……そ、それももちろんさせようとはしたんだけど、あたし……ダスティには弱くって……今はダスティがイブさんに夢中で……」
そんなメイの様子を見て、ミオは察してしまった。
どうやら、惚れた弱みというものが働いているらしいと。
と、なればこれ以上要求するのも厄介だし野暮だ。
それに、そこで相談に乗るほど仲が良いわけでも無い。
かくして互いに成果があった、ということにして、この屋外での会合はお開きになったのである。