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こんなこともあろうかと!  作者: 司弐紘
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1/3の整理できない感情

 当然「ダイモスⅡ」に招き入れるわけには行かなかった。

 いや、そもそもメイが店内に入ろうとはしなかったのである。


 ……それで余計に邪魔になっていたわけだが。

 ミオはとりあえずメイを招き入れようとするが、


「何言ってるのよ! そんなことしたらお客さんのための席が埋まっちゃうでしょ! 全くあんたはこれだから……」


 いきなり怒り出すメイ。そういえばそんな性格だったと全身の発光ごと萎え萎えになるミオだったが、言っている内容については頷く部分が多い。

 そこだけはミオの記憶とは違っている部分だ。その変化を成長と呼べるのかどうか……


 休日設定であることも手伝って、ミオはメイと共に外出することになった。


               ~・~


「こういう時、話が出来る店ってないのよねぇ」

「……あんたの店がそうなんだけど」


 結局落ち着ける場所も無くて「ポッド・ゴッド」中央の広場のベンチに、並んで座ることになった二人である。

 率直に暑い。


「あ、そうか」

「そんな事もわからずに始めたの!? ……まぁ、ウチの店で話をしても良いんだけど、それはヤでしょ?」


 それはそうだ、と心の中で同意しながらミオが話を先に進める。


「で、何の用?」


 さっさと済ませたい一心で。

 メイが唾を飲み込んだ音が聞こえるが、それで思うことも無い。これはわだかまりがあるのか、それとも……


「そ、その、まずは謝らないといけないって」

「うん」


 覚悟が伝わってくるメイの切り出し。だが、ミオの返事は素っ気ないものだった。

 それどころか、


「《《まずは》》って言うんだからその先があるのよね?」


 と、容赦なく突っ込んでいく。


「――ええ、そうよ! あんたに頼みたいことがあるから、会いに来たわけ! でもそれが、おかしな話だとわかってるの! ……わかってるけど……」


 即座にメイが興奮する。興奮するがしかし……


「ま、話してみたら」


 そんなメイに釣られず、落ち着いたままのミオが呆れながら先を促すと、メイは小さくなって話を始めた。

 その話の内容を簡単にまとめると、仕入れの問題だった。


 メイが預かる「サンダーフェニックス」においても各種フルーツはメニューに載せている。だが最近、客が増えたことによって、その供給が追いつかない。

 そこで当然、仕入れ先を増やそうとしたしたわけだが――


「あんたの許可がないと、卸すことが出来ないって言われてね……」

「私、そんな事言ってないわよ!」


 身に覚えの無いミオがさすがに憤ってそう答えると、メイは頭を振って、わかっている、とばかりに小さく頷いた。


「言われてないけど、それが伝わってくるものなのさ。それにこれは……あたし達が悪いんだし」


 俯くメイに見え隠れする翳り。

 それもまた成長の証なのかもしれない。

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