客層の違いを意識
温度を一定に保つというなら、確かに似たような部分もあるのだろう。
しかしこれは屋外のガラスハウスとは全く逆。カウンター下のガラスハウスの中は低温に維持されている。
これは前にもパシャがミオに見せた機能と変わりは無い。
言ってしまえば、ガラスで覆っただけだ。
そこに、どういった意図があるのか。
「ははぁ、この中にフルーツを入れる、と言うか飾るわけですね」
マクミランがパシャの思惑を見抜いた。
「あ、そうか。なるほど……それは綺麗だわ。切り口を見せるようにしておけば、華やかになるわ。で、それを目で確認して注文して貰うのね」
言われて、ミオが具体的な形を整えてみせた。
二人ともパシャになれてきている。
パシャは嬉しそうに微笑んだ。
「さすがです。では客層の違いについても……」
「客層の違い?」
だが、ミオはまだまだ及ばなかったようだ。
マクミランは薄々と感じていたのだろう。ゆっくりと頷いた。
「やはり……そこが気になりますか」
「ええ。今までのお客さん達にそこまでフルーツが喜ばれるかというと、ちょっと難しいのでは無いかと」
パシャが恐る恐るといった態で、その可能性を口にした。
「あ……」
ミオはその可能性に気付いていなかったのか。
あるいは、薄々感じながらもそれから目をそらしていたのか。消え入りそうな声を漏らすだけ。発光も随分大人しくなっている。
パシャはそんなミオを優しく見つめながら、話を続けた。
「ですが、ミオさんのアイデアは優れたものであることは間違いない。そこで俺は店の業務内容を時間帯で入れ替えれば良いのでは? と考えたわけです」
「時間帯……? ああ、なるほど。昼の間はフルーツを売る」
マクミランがすぐにパシャの意図を察した。
「そしてこれまで通り、夕刻からは酒場にするわけですね。確かにこれなら……ああ、それでカウンターに手を加えたわけか」
「その通りです」
つまり、今まで通り酒場として営業するなら板は嵌めたままで良い。
そしてフルーツ店、というか店内でフルーツを味わうこと出来る店として営業する時は板を外して、ガラスハウスを露出する。
そういった使い分けが出来るわけである。
「で、出来るものなの?」
「……そうですね。仕込みはすでに他の場所で行えるようになっています。時間的には不可能では無いでしょう」
何事かを考え込みながらマクミランが応じる。
実際、入れ替えの際の手間は今までと変わらず掃除ぐらいしか想定できない。
さらに手軽に模様替え出来るように段取りを整えれば、店の雰囲気を驚くほど変えることも出来るだろう。
つまり客層の違いに対応できるわけだ。