「ダイモスⅡ」再改造
とは言っても、パシャからの説明が必要なことは間違いない。
そこで改めて二人が問いただすと、最初はやはり板ガラスを欲しての事だったらしい。
「ポッド・ゴッド」周辺がとにかく砂に覆われていることは周知の事実だが、その原因は大河リーコン。「ポッド・ゴッド」の北側に河口があり、その周辺は今でも砂地が広がっているとのことだ。
パシャはガラス製造に際して、その砂に目をつけたらしい。
「デボンがやたらにスピードを出すものですから、荷車に風よけが必要だろう、ということになりまして。そこで――」
やってしまったのだろう。
《《こんなこともあろうかと》》。
で、実際に板ガラスが出来上がってしまうと、デボンはその板を「クーロン・ベイ」に持っていくことを思いついた。「クーロン・ベイ」から高級品を運ぶだけでは無駄が多いことは説明するまでも無い。
「――話はわかりましたが、一体いつの間にそんな事を……」
マクミランが頭を振りながら、そうこぼすと、
「それをマクミランさんが言いますか? いつ休んでるんです?」
と、パシャが言い返した。
そう言われてしまうとマクミランも苦笑を浮かべる。彼が随分勝手に動き回っている事も確かなことだ。
お互いに見つめ合って、ニカリと笑い合う二人。
「言いっこ無しにしよう」という協定が結ばれた瞬間である。
「……当然、お二人にはその点も含めて、説明して貰いますけど」
だが、それをミオが見過ごすはずも無かった。
放つ光に黒が混ざっている様にすら見える。パシャとマクミランが揃って肩を縮こまさせて小さくなっていた。
そうやって主導権を握ったミオは、さらにパシャに詰め寄った。
「それでガラスハウスは? アレはどういうことなの?」
確かにその不思議が残されている。
パシャは自分が言ったことすら覚えて無いようだが、ガラスハウスは誰か説明されるまでも無く、どういうものか知っていたようだ。
つまり知識としてガラスハウスの存在を知っていたということになる。
その点を問いただされると、パシャはますます小さくなって、
「それが……わからないんです。何故それを知っているのか……俺にはそういうことがたくさんあって……」
考えてみればガラスハウスに留まらず、パシャがやることなすこと全てが規格外なのだ。
それに「ポッド・ゴッド」に現れた時、パシャは……
「そ、それでですね! そのガラスハウスの発想があったからでしょう。実は『ダイモスⅡ』を改良しまして」
ミオが悩んでいる間に、パシャが声を上げて話を切り替えようとする。
そのまま腰を上げてカウンター、その下に手を添えた。
今度は表側からだ。
「改良……?」
マクミランが首を捻ると、パシャは無言でカウンター下の板を横にスライドさせた。
当然、今まではそんな仕掛けは無い。
そして板が寄せられたカウンターの中には……
「が、ガラスハウス?」
「その小型版、と言うのもおかしな話ですが」
つまりはそういうものが出来上がっていた。