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こんなこともあろうかと!  作者: 司弐紘
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行き違いの理由

 詳しく話を聞いてもわからなかったのだが――


 とにかくガラス製造はこの辺り一帯で盛んになりつつあるらしい。特に目新しかったのがガラスを平らに作る事だ。

 理屈を言えば、円筒形に作ってそれを熱いうちに切り開いて作るらしいのだが、その手法を持ち込んだのが三白眼のおじさん。


 つまりはパシャだと言うことだ。


 さらにはそういったガラスで家を作るアイデアも出したらしい。外気の温度に関係なく、あるいはもっと南方のフルーツの栽培も可能にしたガラスハウス。


 そういった事情もあって、この地帯一帯の農家はパシャに足を向けて眠れない、といった状態らしい。


「そ、それなら何で……」


 それが判明したとき、当たり前にミオは愕然とした。何故パシャはフルーツ栽培に力を貸したことを言ってくれなかったのか? と。それについてはユージが慌てながら説明を始めた。

 ミオとの行き違いを察し、パシャの立場が悪くならないように考えたのだろう。


「パシャさんは、ここにガラスを作りに来たって言ってたから。確か……デボンって人と一緒に。あんた達が乗ってきたような荷車に乗って」


 だからこそユージは二人を関係者だと考えたらしい。


「そ、それはわかったわ。それで?」

「だから、パシャさんはガラスの板を作りたいというのがまずあって、それで家を作るというのは、ただそういう話をしただけ……だったかな? とにかくパシャさんがこっちに来たの一回だけだからね」


 ガラスハウスのことは知らないままなのだろう、とユージは説明を締めくくった。

 その後に、当然フルーツの新しい仕入れに関しては最優先で協力させて貰う、と約束もしてくれた。


 つまり、現状は交渉する前から交渉が完了しているような状態だったわけだ。


「ミオさん。細かい部分は後回しに……私に任せて貰っても良いんですが、とにかく今は早く帰りましょう」


 言葉を選ばなければ全くの空足。何のためにここまで来たのかわからない。

 そんな状態であるマクミランは静かに怒っていた。


「ええ、本当に……できるだけ早く!」


 そしてそれはミオも同じだった。


               ~・~


「え? え? そんな事に? 実際俺は見てないんですよ。そのフルーツの栽培は……ええ、確かに話だけは聞いていたのかも知れません。じゃないとガラスハウスの話はしなかったと思いますから――ええ、言ったこと覚えていません」


 地下室から引っ張り出されたパシャは、必死になって二人に説明する。

 確実に言い訳だったわけだが、ユージの証言と一致していると受け取ることは可能だった。


 それに実際、話が良い方向に転がっているのである。

 さらには二人にもそういった「パシャを責めることも何か違う」という思いがあったことも確かなことだ。


 帰るまでの道のりで、そんな風に冷静にもなれたのだろう。

 とりあえず二人は矛を収めることにした。

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