ミオのわがまま
「ダイモスⅡ」は雪だるま式に発展を続けた。それも極めて穏便なやり方で。
いや、それどころか「ダイモスⅡ」のやり方は「ポッド・ゴッド」を良い方向に導いていた。
まず新たな就職先の創造。そして今まで「ポッド・ゴッド」を支えていた業種には屋台の存在が癒やしを与えている。
さらにはポッド鶏を育てている農家との専属契約は、さらにポッド鶏の商品価値を上げた。
それに子供が運営する屋台。しかもそれは宙に浮いており、さらにはゴーレム付きだ。
これでは観光客が喜ばないはずが無い。ますます儲かるという構図だ。
そして、その恩恵に預かっているのが参事会だ。特に何をしたわけではないのだが税収が倍増状態なのである。
そして根本が田舎町の寄り合いである参事会は、極めて健康的に増えた税収の使い道を決めた。
屋台で働く子供達を慮って見回りを増やしたのである。それはつまり観光客にとっても喜ばしい変化であり、ますます観光客――具体的には「クーロン・ベイ」からの来訪者が増えたのである。
そうなると「ダイモスⅡ」、それに「ラスシャンク・グループ」も儲かることになり「ポッド・ゴッド」はますます繁栄するという連鎖を生み出した。
結果として「ダイモスⅡ」は現在、屋台を三台保有し、それを運営する子供達、その家族のための寮を東地区に本当に建ててしまっている。
これに喜んだのが運送業に従事する者達で――
つまりは何もかも上手く回っている。
現状の「ダイモスⅡ」、それに「ポッド・ゴッド」を言い表すなら、他に言い様がなかったのである。
~・~
そしてある日の「ダイモスⅡ」の昼下がり。
ミオはカウンターに肘をついてため息をついていた。
すでに仕込みは終わっている。と言うか別の場所で仕込まれたポッド鶏は搬入済みだ。その他の準備は現在見習い中の二人が済ませてしまっている。
その二人は家族と昼食を摂るために寮に帰ったところだ。
ミオは一人で昼食済ませ、やることも思いつかないでいた。
いや、ミオには思うことはあるのだ。
「ダイモスⅡ」の開店準備とか目の前の仕事のことでは無く、これからについて。
現状、「ダイモスⅡ」の繁盛振りはパシャとマクミランのおかげと言っても良い。
それは確かにありがたいことなのだが、ミオとしてはどうにもモヤモヤすることもまた事実。
それがわがままだとわかっているのだが、自分も何か出来るのでは無いか?
いやそれ以上に、屋台で働く子供達と変わらない仕事しか出来ないことを情けなく思うのである。
ミオはもう一度ため息をつく。
そして、そのため息をパシャが聞きつけてしまった。