止まらない思いつき
つまりはマクミランに人材育成部門を任せよう。いや屋台については全般的に任せようという構想だ。
つまり先々には屋台の数を増やす事も見込んでいると言うことになる。
マクミランはこういった仕事には自信があるのか、今度は「向いていない」という申告もしない。
雰囲気的には確かに適材適所という予感もある。
それにこれならミオは変わらずに「ダイモスⅡ」の仕事に専念できるわけだ。
確かに構想の、というか思いつきの段階では良いアイデアのように思える。
「ちょっと待って。それで屋台で売るのってポッドチキンの焼き物になるんでしょ?」
健全と言うべきか、早速ミオが構想に疑問を呈した。
「はい。焼き物になる、というか他の商品は出せないでしょうね。どうやっても狭いですし」
パシャがそれを認めると、ミオが両手を振りながらさらに問いただす。
「じゃ、じゃ、じゃあさ。秘伝のタレはどうするの? それに仕込みとかは――」
「それは屋台を動かす前に『ダイモスⅡ』で仕込みを受け取らせれば良いと思います。この方式なら、私は『秘伝のタレ』について知らないままでも仕事できますし」
マクミランがパシャよりも先に説明してしまった。
さらにリスクマネジメントの観点からの意見も付け足す。
実際、マクミランの構想には説得力があった。
パシャも大きく頷く。
「そうですね。仕込みに関してはどこか別の家屋を借りた方が良いのかもしれません。要は『秘伝のタレ』だけを管理すればいいわけですから」
「確かに。その方が効率的です。仕込みだけの専門家を育成できれば、クオリティも上昇するでしょうし」
二人が言葉を交わすだけで、思いつきレベルの構想がドンドン具体性を増していった。
しかも、まだま止まらない。
マクミランが続ける。
「――となるとポッド鶏の数の確保も必要になってきますね。育てている方と専属契約を結んだ方が……」
「なるほど。俺にはそういう発想はありませんでした」
「その方向でも私に任せてください。何しろ実際の調理や接客には向いていないので、その他の仕事に割り振れる時間も多いんです」
肩をすくめながら、自嘲気味に自分の担当する仕事をドンドン増やしていくマクミラン。あるいはそれが理由になるのだろう。
ミオが、
「ちょっと待って!!」
と、二人を大声で止めた理由として。
「は、話が戻っちゃうけどさ。私はもうマクミランさんを信用してるのね。だからタレについて、そんなに気を遣わなくても――」
「そうなんですか? それは助かります」
だがパシャがミオの訴えを遮ってしまう。いや、単純に遮ったとも言えない言葉だったが……
「実は俺、ちょっと先走りしすぎた気もしてたんですよ――裏口に行きましょう」
そう言って、パシャが二人を促した。