屋台構想
開けて翌日。というか翌朝。
「ダイモスⅡ」のテーブル席で再び三人が顔を合わせていた。
ただし今回中心になるのはパシャだ。
昨日のマクミランの就職活動は成功したと言っても良いだろう。
無事「ダイモスⅡ」への就職が決まったのだから。
だが、昨日はそこまでで時間切れだった。
店を開けねばならない。
ここでマクミランが店を手伝うとなればややこしくなるところだが、
「秘伝のタレを明かすほど、当たり前に私を信用されてはいないでしょう。ですから、私はまた明日伺います」
と、マクミラン自身が申告したので微妙な空気にはならなかった。
ただその代わり、
「私は……こう言ってしまうと不遜であるとわかっているのですが、接客には向いていません」
と、身も蓋もないことを言い出した。さらには、
「調理の技能も持っていない。広義の意味での刃物を使うことに関してはある程度の心得はあるのですが」
と繋ぐ。
じゃあ、何が出来るんだ? となるわけだがパシャもそういう想定であったらしい。こう返事をした。
「じゃあ、俺の考えにはぴったり当てはまりますね。では明日」
「そうなの?」
と、完全に置いてけぼりにされた形のミオだが、パシャにはここまでの実績がある。かなり簡単にマクミランの希望については先送りにしてしまった。
そして、ある意味ではミオの期待に応える形でパシャが披露した構想とは――
「――屋台を出すの? お祭りとかで広場に出てくるアレでしょ?」
「簡単に店を増やせるというなら、アレが一番だと思いまして。『ダイモスⅡ』は簡単に増築できませんし、それに秘伝のタレをどう扱うか、という問題もあります」
その辺りの事情はパシャの言ったとおりなのだろう。
ただし前提条件として、クリアすべき問題点があった。
「店を広げるの?」
早速ミオが、その前提条件に疑問を呈した。
「そうですね。『ダイモスⅡ』はこのままでも良いと思うんですが、このままお金を貯め続けるだけというのも……それに今はマクミランさんがいます」
パシャがミオに説明――というか言い訳を並べる。
だが、それは言い訳と言うには説得力がありすぎた。
マクミランを受け入れてしまった以上、何かしら仕事を作らなくてはならないという義務感。
そしてマクミランがいるからこそ、新しく挑戦も出来るという有利さがあれば――
「ああ、なるほど。私は屋台を任せることが出来る人を育てるんですね」
「そうです。屋台については、マクミランさんに任せてしまおうかとも」
マクミランが、パシャの構想における自分の役割を察した。