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こんなこともあろうかと!  作者: 司弐紘
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それは「嫉妬」と人の言う

 ダスティがやらかしたこと。

 端的に言えばそれは「ラスシャンク・グループ」に利益をもたらしたこと、という風にまとめることが出来るだろう。


 マクミランが話すところによればダスティは「ラスシャンク・グループ」に新風を持ち込んだらしい。


「新風……ですか?」

「ええ。従来の発想ではなかなか出てこないアイデアを彼は次々と実行しまして。ミオさんもご覧になったことは無いですか? 突然そびえる塔のようなものを」


 最近「ポッド・ゴッド」の街中で青い塔が突然出現する事がある。

 ミオも目撃したことがあるが開店準備で忙しいので、それがなんなのか確認したことはない。


「あれはパンが焼き上がったという合図なんですよ。塔が出現したときに買いに来れば焼きたてを手に入れる事が出来る、という仕組みです」

「それをダスティが思いついたんですか?」


 ミオが半信半疑な様子で確認すると、マクミランは躊躇無く頷いた。


「それもアイデアなんですが、何より子供たちが喜びますし、それに何より観光客が……」

「ああ、観光客か……」


 「ポッド・ゴッド」を訪れる人が多くなっている事はミオも感じていた。

 「ダイモスⅡ」店内で動き回るゴーレムを、今更になって面白そうに見物していく客が増えているのだ。観光客にとってはまだまだ珍しいものらしい。


 そういった派手な演出は「ボムズドラゴン」だけでは無く「ブラックライオン」と「サンダーフェニックス」でも行われているらしく、これが軒並み好評らしい。


 ダスティはそういった企画力に天性のもがあるらしく――不良少年だから単純に派手好きの可能性もあるが――そういったプロデュースで「ラスシャンク・グループ」に新風を吹き込んだ。


 それを総帥であるイブがことのほか喜んだらしく――


「ちょっと待って。その総帥のイブさんって女の人なの?」

「はい。最近は彼のことばかりを褒めるもので……」


 マクミランの口調は変わらないが、ミオは掃除の手を止めていたパシャと思わず顔を見合わせあう。


 それで二人とも確信してしまった。

 詰まるところ、マクミランはダスティに嫉妬しているのではないか――


「――もしかしてですけど、それが面白くなくて転職しようと?」


 恐る恐るミオが確認してみると、今度はマクミランの様子が変わった。

 怒り、では無く、その表情は戸惑いに近い。


 わずかに眉根がよって、自分の感情を自分で探すような面持ちだ。

 だが、言うべき事は決めてあったのだろう。

 

 次にこんなことを言い出した。


「いえ私は――やはりダスティはよくないのでは? と思いましたので『ダイモスⅡ(こちら)』に身を寄せようと」


 それを聞いた二人はもう一度顔を見合わせた。

 結局同じ事なのでは? と。

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