マクミラン、辞めるってよ
マクミランが行おうとしているのは就職活動。
ミオとパシャが咄嗟にそれを理解出来なかったとしても、無理からぬ所だろう。
「えっと……あの先ほど説明してくれた『ラスシャンク・グループ』は?」
ミオがどうにかこうにかマクミランに確認する。
つい先ほどまではマクミランは「ラスシャンク・グループ」からのメッセージを携えているものだと思っていたのだ。
それが全くの逆――とも言いがたいが、とにかく意表を突かれたことは確か。
パシャも混乱しているのか、しばらく黙り込んでいたが、やがて自分なりに納得出来る説明を見出したのだろう。
それをマクミランに確認する。
「あ……っと、つまり『ラスシャンク・グループ』にはまだ籍があって、その上で何らかの理由で『ダイモスⅡ』で働きたいと思って、その可能性を追求していると」
「いいえ。辞めてきました」
マクミランはパシャが苦労して紡ぎ出した言葉をあっさりと否定した。
続けて、
「そういえば。私が『ラスシャンク・グループ』に籍があることお話しましたっけ? 確かに先日までは勤めていたんですが……」
何やらマクミランも混乱しているらしい。
そう感じたミオは、探り探りマクミランに申し入れる。
「あの……何があったのか聞いても良いですか?」
「はい。当然のことと思います。出来るだけ短くまとめますので――よろしいですか?」
確かに話が長くなると「ダイモスⅡ」の開店準備にも弊害が出てくる。
それを気遣えるマクミランへの好感度は上がる二人だったが、だからといってそれで準備を遅らせるわけにはいかない。
パシャが気を遣って腰を上げた。
「じゃあ、ミオさんお願いします。俺はゴーレム達と準備進ますんで」
「パシャさんにも聞いていただきたいんですが……」
しかし、それにマクミランが「待った」をかける。
パシャはその言葉に笑みを見せた。
「俺はこの辺りを掃除してますから。ちゃんとお話は伺えると思います」
「そうですか……では、最初はやはりダスティについて」
その名を聞いた途端、ミオの表情が曇る。
全身の発光も力強さを増した。当然のことながら怒りはまだまだ継続中らしい。
「ダスティって……前にウチで働いていたダスティですよね?」
それでも冷静にマクミランに確認する。
マクミランもそれに淡々と答えた。
「そうです。そのダスティです。彼が私が『ラスシャンク・グループ』をお暇しようと判断した理由です」
「アイツまた何かやったの!?」
思わず立ち上がったミオが、そう叫んでマクミランに詰め寄った。
マクミランは小さく頷き、
「何かやった、とも言えるんでしょうね。最近の彼は」
と思わせぶりな答えを返す。