マクミランの告白
マクミランが「ダイモスⅡ」を訪れたのは、昼近くになってから。
この時間が手すきであると、マクミランが弁えていたのは、さすがと言うべきなのだろう。
しかし、ミオもパシャもそれに気付かない。
何故なら――
「『ラスシャンク・グループ』……? ですか?」
そもそも二人とも「ラスシャンク・グループ」を知らなかった。
名前も。その業務内容も。
「はい。いわゆる外食産業ですね。レストランなどが該当します。こちらの『ダイモスⅡ』も含まれます」
テーブル席に腰掛けたマクミランが変わらぬ表情で、淡々と説明する。
それをミオとパシャが並んで鹿爪らしい顔で聞いていた。
「『ラスシャンク・グループ』はそういったお仕事をとりまとめているグループなんです」
「それって参事会みたいなことですか?」
ミオがそう確認すると、マクミランは一瞬黙り込んでから、
「――いえ、やはり違うかと。参事会の方々はこの街全般を受け持っておられますが『ラスシャンク・グループ』は外食産業だけ。それにそういった業務を始めたのは自分達ですから」
と、丁寧に答える。
その真摯な対応にミオも納得いったと言わんばかりに大きく頷いた。
何より自分たちで始めた、という説明で違う組織であることを確信したようだ。
マリーの姿を見て、何かしら感じるところがあったのだろう。
「では、マクミランさんは何故?」
――「ダイモスⅡ」に尋ねてきたのか?
と、パシャが三白眼をギョロッとさせながらマクミランに声を出さないままで尋ねる。
すでに自己紹介は済ませた後だ。その儀礼的な自己紹介の時から、パシャはすでに警戒心をあらわにしていた。
前回のマリーの査察のこともある。
パシャのそういった反応はむしろ自然とも言えた。
そういう条件下でマクミランは「ラスシャンク・グループ」の説明を始めたのだから、パシャの三白眼がますます眇になる。
ここでマクミランが敵対的な言葉を口にするなら、赤いゴーレム達がマクミランを外に放り出すだろう。
ミオは意図してやったことでは無いが、参事会とは関係ないとの言質も得ている。
いざとなれば実力行使躊躇わない。
そういうパシャの気構えが伝わってくるが――
「はい。ええと……そうですね。私が『ダイモスⅡ』に伺った理由なんですが」
マクミランが言いづらそうにもったいぶる。
だがそれは攻撃を躊躇っている風ではない。
本当に何か言いづらそうに……
「実はですね。私をこちらの店で雇っていただけないかと。つまり……就職活動を行いたいわけですね」
そのマクミランの告白に、ミオとパシャが揃って目を剥いた。