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こんなこともあろうかと!  作者: 司弐紘
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言葉に出来ない

 さて東区画とは、どういう人たちが住んでいるのか。何しろ「クーロン・ベイ」への道に直結してるような区画だ。

 だからこそデボンのような運送業で身を立てている者が多い。


 だから昼夜の区別無く荷車が出入りするので環境も良いとは言えない。

 さらに「クーロン・ベイ」との取引で一攫千金を夢見る者も多く居を構えている。あとは単純にそういった生活を気に入って、便利なこの区画にこだわる。


 つまり、言い方を選ばなければ刹那的に生活している者がほとんどなのだ。

 それが理由になるかはわからないが、東区画の住人は他の区画の住人に対していささかコンプレックスがある。


 つまりミュンの様な女性が東区画に現れると、それだけで少し引いてしまうのだ。

 マクミランの狙いもここあたりにあるのだろう。


 もちろん、ミュンの腰も引けている。

 この地区の住人達とお互いに腰が引けた状態だ。これでミュンがデボンの家の場所を尋ねなければならない、という状況なら実に面倒になるのだが、そこまで段取りは悪くない。


 デボンが「ポッド・ゴッド」にいることも確認済みだ。

 あとはミュンがデボンに接触するだけ――はずだったのだが……


 いつもは控えめに伏せられているミュンの目が大きく見開かれている。

 デボンに驚いたのでは無い。


 驚いたのはデボンの家の横に停められている荷車ついてだ。

 何しろ宙に浮いている。


 いや、果たして荷車なのか。何より車輪が無い。

 だが荷物がたくさんに載せられているから、やはり荷車なのだろう。


 ……それだけの荷物を積んで尚、浮いている事になるので、ミュンはますます混乱する。


 そして立ち尽くすミュンの前で、デボンが家から現れた。ミュンに気付いたわけでは無い。そこまでミュンは近付いてはいない。


 デボンは単純に荷車(仮)から荷物を降ろすために姿を現しただけだ。

 近所の子供達をあしらいながら「これは僕しか動かせないんだ」などと言い訳もしている。


 それを聞いたミュンは目を見開いたまま、その場で回れ右した。

 もう十分にミュンの精神(こころ)の許容量をぶっちぎっている。


 つまりミュンは逃げ出したのである。


                ~・~


 そのミュンの報告を受けたイブとマクミラン。

 いや最初は報告の形にもなっていなかった。ミュン自身が言葉に出来なかったのだろう。


 それでもなんとかミュンが見たものを聞き取ってゆくと、ある程度の状況はわかる。


 ――宙に浮く荷車。


 なんとかそれだけは理解出来た。

 しかし、それは言葉に出来ただけのこと。


 ミュンの報告を言葉にしたイブとマクミランは迷う。

 報告を受けたが、これから先、何をするべきなのか……


 更なる調査か。それとも放置か。

 迷う二人は言葉を失ったのである。

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