繁盛、繁盛
すでに日はとっぷりと暮れている。だが「ダイモスⅡ」から溢れ出る光と、楽しそうな声はまだまだ途切れそうにも無い。
それほど客で賑わっているのだ。
今も犬人種族と猫人種族の常連客達が肩を組みながら「ダイモスⅡ」から出てきた。千鳥足になって随分ご機嫌らしい。
下手くそながら歌まで歌っている。
それからしばらくは「ダイモスⅡ」からも歌声が聞こえてきたが、やがてツバメに似た鳥人種族も姿を現した。
デボンだ。
それほど酔ってはいないらしく足取りはしっかりしている。そのまま「ポッド・ゴッド」の東側にある自分の家へと帰るようだ。
……そして、デボンの後をつける男が一人。
~・~
焼き肉専門店「ブラックライオン」。この店はダスティ達が店を開こうとしていた場所に出来上がった店だ。「ラスシャンク・グループ」の援助の元で。
店主はダスティ。売りは串に刺した牛肉を各テーブルまで持っていきその場で切り分けるという豪快さだ。それを各種用意されたソースで食べる。
そういうコンセプトのレストランだ。
この店はあたった。主に家族連れに。
やはり豪快さが子供達の関心を引いたのだろう。
今ではグランタというダスティのかつてのケンカ友達に調理のほとんどを任せ、ダスティ自身は各テーブルを回って愛想良く肉を切り分けたりしている。
そんなダスティの様子を隅のテーブルに陣取って眺めている二人がいた。
「ラスシャンク・グループ」総帥のイブと、マクミランである。
お忍びで視察――のつもりだったのかもしれないが、どうしようもなく目立っていた。あるいは最初からそんな意図は無かったのか。
挨拶に来たダスティにイブは笑みを見せて、気にせず働いてくれと声をかけた。やはり「ブラックライオン」には問題が無いようだ。
しかしマクミランと小声で話し続けるイブの表情は冴えない。
相手をするマクミランの表情が変わらないので、なかなか本当のところは窺い知れないが、やはりダスティとしても気になってしまう。
そのせいか二人が座る隅の一角だけが切り取られたような雰囲気だ。
今は客足が鈍る昼下がりではあるので、そこまで深刻では無いのだが……
「……では、参事会からは『問題ない』という返答しか返ってこないと」
イブがやはり深刻そうにマクミランに確認した。
「はい。危険なものを使ったり、仕入れたりはしていない。それは間違いなく確認したと。それだけです」
マクミランが、いつもと変わらぬ表情で報告する。
もちろん二人が話しているのは「ダイモスⅡ」についてだ。参事会をせっついてみたが、予想された反応が返ってこない。
それがイブを戸惑わせているのだ。