アイランドを求めて
塩辛――パシャは何か知っているようであるが、しきりに首を振っている。そういう言葉だけをうろ覚えの状態であるようだ。
ミオに関しては見当も付かない、という状態だ。その代わりに「アイランド」という名前には確かに聞き覚えがあった。
「確かにいたわ……母さんがまだ生きていた頃、鳥人種族の髭のおじさんと会ったことがあって、確かそのおじさんの名前が『アイランド』だったわ」
「そうですか。では取引相手と言うよりは、普通にお友達だったのかも知れませんね」
パシャのその意見にはミオも賛成だったが、それ以上に手がかりになりそうな事は思い出せない。
そうなると陶器板という商品自体を手がかりとして扱わなくてはいけなくなるのだが――
「ああ、そういうちょっとお高い物を『クーロン・ベイ』から仕入れて売ってる店あるよ」
タイムリミットということで店を開けてみると「ダイモスⅡ」は自然に情報収集できる環境である事にミオは気付いた。
焼きながら、自然と常連客達と言葉を交わすことになるからだ。
「『クーロン・ベイ』から? ああ、大きな街だしね」
「そうそう」
チキンの皮目に集中しながらミオが目を向けずに応じると、狐人種族の常連客は目を細めながら頷いた。
話に出てきた「クーロン・ベイ」とは「ポッド・ゴッド」から東に向かって、海岸線を七日ほど辿った所にある大都市である。
山を越えるなら、そこまでの日数はかからないが難路ではあった。
「じゃあ、そういった店の中に『アイランド』さんが開いてる店があるのね」
次の調査の方針は決まったと思い、ミオがチキンをひっくり返しながらそう言うと、隣で聞いていた虎人種族の常連客からも声が上がった。
「いや『アイランド』ってんなら、それは運搬業者じゃなかったか?」
「そうだっけ?」
「確かそうだ。運搬って言うか『クーロン・ベイ』で何やら仕入れてきて、こっちで売る感じの」
狐人種族と虎人種族との間で話が進んでゆく。
ミオもなんとか参加したいところだったが、今は集中しなければならない。
その上、ゴーレム達が次から次へと注文を聞いてくる。
もうこれ以上は情報収集にかかりきることは出来ないだろう。
そんな状況だが、カウンター席の二人はいい話のアテが出来た事で、さらに話し続けていた。
「そういう仕事か。あれも結構なバクチな商売だよなぁ」
「ああ、それでなのかな……?」
「どうしたい?」
「最近見ないんだ、その『アイランド』。商売替えでもしたのか、それとも――」
「やめろ縁起の悪い」
本当に縁起でも無い、とミオも内心で同意しながら胸がざわつく事を抑えきれなかった。
手がかりは切れなかったが、未だ秘伝のタレの再現は本当に出来るのか不鮮明なままだ。