表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
こんなこともあろうかと!  作者: 司弐紘
14/107

秘密厳守

「え? あ、あの、お話は店長から……」

「なかなか専門的な話になってしまいますから」


 三白眼に恐れを成したのか、マリーはなんとかパシャを避けようとしていた。


「パシャさん、言っちゃうの?」

「参事会の方ですから。ちゃんと説明した方が良いかな、と」


 ところがマリーがパシャを避けるための名目にしようとしていた店長(ミオ)自身が、パシャを巻き込もうとしていた。


「……アレは説明出来るのかなぁ」


 しかも、とても気になる言葉を添えて。


「わかりました――え? 厨房の奥なんですか……一体何を……?」

「見て貰った方が早いと思うので」


 覚悟を決めたはずのマリーが、パシャの案内に戸惑いを見せる。だが一度了承してしまった以上、どうにもならないだろう。

 マリーはパシャの後ろに従った。


 そうすると、そこまで広くはない「ダイモスⅡ」である。マリーは横にスライドする入り口と地下室。そしてそこに蓄えられている秘伝のタレを、あっさり確認することになった。


 それらを見た時のマリーの反応とは「絶句」そのものであったことは言うまでもないだろう。

 そこにパシャが追い打ちをかける。


「査察ということですから、この店を潰したいわけではないですよね? お客さんに悪いものを提供していないか確認するために来られた――そうですよね?」

「え、ええ」


 厳密に言えば違う気もするが、そういう名目が査察の理由に含まれていることは確かだ。マリーとしても頷くしかない。

 パシャはその頷きに乗っかった。


「仕入れした様子がなかったのは、仕入れの必要が無かったからです。何せこれだけの量がありますから。ミオさんのお父様は用意周到な人だったようですね」

「用意……そうなんですね」


 確かにそれなら理屈は通るわけだ。

 だが、マリーはこのタレがすぐにダメになるという情報も提供して貰っている。


 こんなに大量にあって、簡単には使い切れないとなると――


「あ、これスプーンと小皿です。確認しますか?」


 絶妙なタイミングで、ミオがマリーの背後から現れた。

 こうなるとマリーもタレの鮮度を確認するしかない。美味しそうな香りから察するに、どう考えても腐ってはいないはずなのだが。


 ミオがタレをすくい小皿に乗せてマリーに差し出す。マリーは儀式的にタレの匂いを嗅いでから、舌先でその鮮度を確認した。


 確かに腐ってはいない。これなら文句はどこからも出ないだろう。そこまでは予想通りなのだが――


「冷たい……んですね? これはどういう……?」

「ですから、こういった事情も含めて秘密厳守でお願いしたいんですよ」


 再びパシャの三白眼がマリーを()め付けた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ