搦め手二つ
「ラスシャンク・グループ」は「ポッド・ゴッド」において勢力を拡大する外食産業グループだ。
鄙びた田舎町と目される「ポッド・ゴッド」で、こういった外食産業に力を入れる意味がわからない、とは最初から言われていた部分である。
しかし「ラスシャンク・グループ」は、そういった声に構わず事業を進め、「ポッド・ゴッド」において、ある程度の地位を確保してしまった。
基本的には北方の料理を提供することが多い「ラスシャンク・グループ」。
現在はそれにこだわらず、様々な店舗を運営している。
さらにはそういったレストラン、あるいはホテル目当てで「ポッド・ゴッド」に訪れる者も多くなってきていた。
こうなると「ポッド・ゴッド」の参事会の覚えもめでたくなるというものだ。
ここに「ラスシャンク・グループ」の戦略が見えてきたとも言われているが……
「『ダイモスⅡ』……マクミランはどう思いますか?」
「よくわからないのは、パシャという人物ですね」
イブの質問にマクミランは淀みなく答える。そしてそのままイブの前へと移動した。
「『ダイモスⅡ』の再開は早すぎます。いえ、そもそも再開できたことが異常です。後から状況を調べてみて判明したことですが」
「その不思議を受け持っているのがパシャ……調べたんですよね?」
マクミランは頭を下げながら首を横に振った。
調査はしたが成果はなかった、ということなのだろう。
「そうですか……ではどうしましょう? 別に放っておいても良いと思いますけど。あの三人にはそこまで付き合わなくても良いですし」
「それはそうなのですが、不思議は目に見えています。ですから、そこは確認してもよろしいかと」
イブの判断に、マクミランが異論を挟み込んだ。
意外に感じたのだろう。イブが身を乗り出した。
「その不思議とは?」
「例のタレですが……そういった材料を仕入れている形跡が無いのです」
同じ外食産業だ。仕入れの情報に関しては、自然と耳に入ってくる。
それなのに仕入れの形跡が無い事は確かに“不思議”と言えるだろう。
「なるほど……そこから調べてゆくわけですね。搦め手ですか」
イブがマクミランの言葉に頷いた。それは調査を進めよ、という指示でもある。
だからこそマクミランはさらに続けた。
「実はもう一つの搦め手と組み合わせようと思案しております。許可をいただければ……」
「それは?」
「参事会に問いただしてみようかと」
イブは少しの間だけ思案したが、もう一度マクミランに頷いて見せた。
パシャに対しては、イブも不思議に思うことが確かにあったのだ。