ブルーエルフ族の拒否
天翔る船は、斜面をせき止めるようにレッギ山地に横付けされた。
これをわずかな操作で成功させたのだから、デボンの腕は相当なものだと言えるだろう。
続いて船から飛び出したウェストとアイザック率いる兵士達が、座り込んでいたブルーエルフ族を取り囲んだ。
ブルーエルフ族は抵抗もしなかったので、本当に救助されたような光景になってしまう。
ブルーエルフ族はかろうじて二桁ほどであろうか。
船の上から確認出来たような、中央にいたはずの巨大な影の方は見当たらない。
「……あそこに居るのは族長のジョーニアスだな?」
「ご存じでしたか。そうです。確かにジョーニアスがいます」
ウェスト達から遅れて船を下りたデュークとマクミランが、確認し合った。
やがてシュンも斜面を登って、デューク達に合流する。驚くべき報告を携えて。
「ユウキ卿が保護された。詳しい所までは聞き出せていないが、北に向かった段階ですでに操られていたと考えた方が良い」
では、どこから始まった企みであったのか?
誰がそれを考えたのか?
デュークは難しい表情を浮かべ、ちらっと後ろを確認する。
そこには「やれやれ」といった面持ちで船を下りようとしているパシャの姿があった。
その様子からは何も関係ないように思えるが、パシャは自分で言っているのだ。
記憶が定かでは無いと。
「……ええぃ、クソ! とにかくまずはこの事態に対してだ! ジョーニアスにしゃべらせよう!」
「そ、それそうなのでは?」
デュークの叫びにシュンが戸惑った声を上げる。
シュンにしてみれば他に対処しなければならない要件があるとは感じていないようだ。
一人、マクミランだけが小さく頷く。
とにかくまずはブルーエルフ族――その族長であるジョーニアスから話を聞き出すしか無いだろう。
どちらにしろ鍵を握っているのはブルーエルフ族だ。
そしてデューク達が近付く前にウェストとアイザックは尋問を終えてた。
それはウェスト達が厳しく当たった、と言うわけでも無く――
「……デュークか。面倒をかけた。我らを助けてくれたことに感謝を」
座り込むジョーニアスの態度がどこまでも殊勝だったからだ。
それ自体が策謀の一環の可能性は捨てきれないが、北の集団に加わっていたことは間違いない。
何かしら企みがあるのなら、あの無軌道な集団に混ざることはしないのではないか? という推測。
そして、へたり込んだブルーエルフ族の姿は族長のジョーニアスも含めてボロボロだ。
「ウェストさん、何か聞き出したか?」
「ああ……ジョーニアス殿、もう一度説明を」
デュークの問いかけに応じて、ウェストがジョーニアスを促す。
すでにジョーニアスは事の次第を白状しているようだ。
だがそれは果たして「白状」と呼べるようなニュアンスであったのか――
「我等は生け贄になることを拒否する。ズォーメルのいいようにはならん!」
ジョーニアスは断言した。