意図的な呆然
強烈な光が北の集団を灼いた。
続いて強烈な音が叩きつけられる。
天翔る船の船首からそれらが発せられたのだ。レッギ山地の中腹を見下ろすような形で。
「ポッド・ゴッド」から進発した部隊は、その強烈な光はもちろん浴びていない。
船よりも後方に居たのだ。それは当たり前なのだが――
指揮を執るはずのシュンがまず声を失っていた。
あまりの光景に。
そして耳栓をしていたとはいえ、伝わってくる爆音。
それはレッギ山地全体を揺さぶるようで、あちこちから崩落の音が聞こえてくる。
地形を変えるような一撃を食らった北の集団は完全にその場で停止していた。
皆が尻餅をついて、ポカーンと口を開けている。
だが、それだけだった。
見える限りではあるが、大きな怪我を負った者もいないようだ。
つまりは強烈な光と爆音を叩きつけただけ。
大規模な目くらましのようなものだが、北の集団が報告にあった様な有様であるなら、これで正気に戻るはずなのである。
だが正気に戻ったとしても、まだまだ油断できるものでは無い。
「デボン、忘れてた。着地も任せたい」
「何で? いや、やるけどさ……」
パシャがデボンに指示を出した。
デュークは自らが放った一撃に圧倒されているのか、黙り込んだまま。
北の集団と同じく呆然としているのかと思われたが――
振り返ったデュークの視線がマクミランをなぎ払った。
それに応じるように、頷きを返すマクミラン。
デュークは一瞬、怒りにも似た表情を浮かべるが、まだまだやるべきことはごまんとあった。
「ようし! 突っ込んでくれ! まずはブルーエルフ族を確認しないとな!」
自分自身に指示を出すように、デュークは吠えた。
~・~
北の集団を形成していた者達は、強烈な光と音で自分を取り戻していた。
少なくとも南へ向かうという強烈な意志、あるいは飢餓感に通じるその感情を完全に喪失していたのである。
当然、戦う意志もない。
シュンに率いられた地上部隊は戦闘では無くて、予定通りそういった「被害者」の救援に力を尽くすことになった。
自分達が何をしていたのか?
どうしてこんな場所にいるのか?
それすらもわからない、かつての北の集団はシュンの部隊に導かれるままに全員が武器を投げ出し、その場に座り込んだのである。
これはレッギ山地をまだ通過していなかった「アイアンフォレスト」要塞址の向こう側に居た集団同じ様な状態であったらしく、後ろからの突き上げも無い。
つまり「ポッド・ゴッド」の危機は回避されたわけである。
あとは――
この騒ぎの原因を取り除くだけ。
しかしその原因に三白眼のおじさんが絡んでいるとするなら……