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こんなこともあろうかと!  作者: 司弐紘
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引き金を引くとき

 「アイアンフォレスト」要塞址。石壁が組み合わされ、それらが崩れた部分を乗り越えて、武装も怪しい男が現れた。

 そのまま斜面を転びながら降ってゆく。


 そういった男達が次から次へと要塞址からにじみ出してくるのだ。

 確かにこれは軍事的な動きでは無い。何ものからか逃げ出しているように見えるが、それに同情すれば巻き込まれてしまうだろう。


 そういった情け心を弄んでいる間にも男達――もはや老若男女関係なく、北からやってきた人々は集団になって、なだらかな斜面に溢れ出そうとしていた。


「デュークさん。風防に映像出します」

「頼む」


 パシャが告げると、デュークは間髪入れずにそれを了承した。

 途端、風防に北の集団が映された。グッと至近距離から見たような景色が映し出される。


「これは……近すぎるのでは?」


 マクミランがそう呟いてしまうほど、風防に映された景色は鮮明だった。

 人々の表情までわかるレベルで。


「いや……これで良い。これで真ん中を確認しないと、かえって……」

「斜面にいる限りは有効のはずです」


 デュークとパシャから、この緊迫した雰囲気の中であっても律儀に声が返ってくる。二人も声を出すことで張り詰めすぎた空気を和らげようとしているのかもしれない。


 だが――


「見たぞ!」


 やにわにデュークが声を上げた。

 果たして、その時風防に映る景色には青い肌の種族が映っている。


 かつての「北の帝国」の中核を為したブルーエルフ族で間違いない。

 そしてブルーエルフ族の中央には、一際背の高い何者かが居た。


「よくわからんが……撃ってしまえば良いか。力を撓めろ!」

「これは……思ったよりも。ちょっと負荷をかけます」


 デュークの声に応じるように、パシャが宣言する。

 同時にマクミランの身体に力が抜けるような感覚が襲ってきた。


 マクミランがハッとなって周囲を見回すが、どうやらデボンも同じ状態であるらしい。

 いやそれどころか風防に映し出されている集団からも力が抜けているようだ。これでは恐らくシュンが指揮する地上部隊も同じ状態になっているだろう。


 しかもこの感覚は……


『耳栓付けろ! 気合い入れて腰を落とせ!』


 デュークの声が船外に響く。この警告は同時に合図でもあるのだ。

 船内からは見えないが、地上部隊もこれで覚悟を決めたはず。


 デュークの目の前からクロスボウの引き金部分だけがせり出してきた。

 これで集団の中央――先ほど発見したブルーエルフ族の集団に標準がセットされる。


 あとは――その一瞬を待つだけ。

 デュークが効果が最大になると見切った瞬間。


 ブルーエルフ族を引き寄せるようにして、人差し指が引かれた。

 

 そしてレッギ山地に太陽が墜ちる。

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