序章(という名の百合えっちらしきものです) ―――ゆず視点―――
はぁ、はぁ、はぁ…
荒い息をつく。
「どう?体の疲れは癒せた?」
こう聞くのはあたしの大親友、橘 凛。
彼女の顔を見ると一緒に、その健康的な素肌と、小ぶりな胸も目に飛び込んでくる。
あたし達は二人して裸で、ベッドの中に一緒にいる。
さっきまである”行為”をしていたのだった。
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「じゃあ、始めるよ。」
その言葉と共に、先ほどの<奴ら>初退治報酬を体力回復用に使うよう魔法少女システムの端末をいじり終わったリンは、疲れのためベッドに倒れ込んでいたあたしの部屋に入ってきた。
彼女は、開けっ放しになっていたあたしの部屋のドアを後ろ手に閉めると、嬉々として服を脱ぎ始めたのだった。
カーテンが開いていたので、窓から月明かりが差し込んでいる。そのひかりに映し出される純白の、シルクのような肌。
そんな、あたしの幼馴染は一歩歩くごとにその着ている服を少しずつ取り払っていき、その滑らかな素肌をあらわにしてゆくのだった。
そして、疲れて仰向けに寝っ転がっているあたしのところにたどり着くころには、一糸まとわぬ姿となっていた。
彼女は四つん這いになって、あたしの上に覆いかぶさる。
いくら心から大好きだとしても、そしていつかはこうして裸の身体を重ねたいとまで夢見ていたけど(この心は今のところは隠しておこう)余りにも早すぎる展開に追いつけずに、でも彼女の目論見は分かったあたしは抗おうとしたが無駄な抵抗でしかなかった。
ぅんっ…といったような音を立てて、リンがあたしのくちびるを攫ったからだ。
それだけでも身体はダイレクトな反応をしてしまう。驚きで目を大きく見開きつつ、自然にその感触を一生懸命覚えようとしてしまう。
だが、それだけでは彼女は許さない。
一度くちびるを離すと、あたしの顔をまじまじと愛おしそうに見つめてから、またもう一回押し当ててきた。しかも今回のキスは強烈なやつだった。
くちびるが押し当てられた瞬間、あたしのくちびるに何かぬめっとした訪問者がやってきた。彼女のなすがまま受け入れると、彼女の舌はあたしの口腔の中を、そして歯の裏側をこれでもかとまさぐり、最終的にあたしの舌と合流する。
お互いに触覚と触覚でお互いの存在を確かめ合う。
甘く、濃密な時間が漂う。
どれくらいたっただろうか。
リンがやっとくちびるを離した。
そうしてフフっと可愛らしく笑うと、
「ゆず、緩み切った顔になってるよ。すごくかわいい」
このキスで幾分か骨抜きにされてしまったらしいあたしは、彼女の要求を受け入れるがままの状態となる。
リンはそんなあたしを見るや、あたしの制服を脱がし始めた。
セーラー服が脱がされ、スカートのホックも外され……
あたしは自分が脱がされている立場にも関わらずこの、あたしよりも少し身長の低い全裸の美しい少女に見とれてしまっていた。寝っ転がっているあたしにまたがり、一生懸命に服を脱がせようと頑張る姿もまた愛おしい。
リンはあたしの全てである。あたしの唯一無二の親友で幼馴染、そして初恋の人。
そんな事をあたしが思っている間にも、彼女のあたしの服を脱がすのは着々と進み、残すところはパンティ一枚となってしまった。
最後の攻防戦が始まるが、すぐ終わる。
3度目のキスに驚かない為の予防はしていたが、耳は対象外。
彼女は耳を甘噛みし、それだけでは飽き足らずそこにも舌を入れてきた。
流石のあたしも、
ひゃぃっ
と甘い声をあげて屈してしまった。
そして、あたしの残されていた唯一の壁は取り払われてしまった。
さっきからの彼女の猛攻に耐えられずにじゅくじゅくになっていた所に気が付くと、彼女の滑らかな指は的確に弾いてくる。もう湿っているとかそんなもんじゃない。洪水みたいな状態だ。
そこからはこの上ない快感が伝えられてきた。すべての疲れもこれだけで癒せそうだ。
リンがやっているから、というのも少なからず理由としてはあるだろう。あたしは、幼馴染であるリンの事が、好きだ。友達として、ではなく性的にも。
だが、根本の理由はそこではない。
本当に文字通りすべての疲れが癒せる。
これが、さっきリンが報酬で交換していた、体力回復用エネルギー源の補充方法なのだ。
なんと不公平なことにも報酬の交換は攻撃をする側の魔法少女しかできなく、じゃあどうやって守りの人が回復するのかというと、攻撃側の人と心を通じ合わせての性的接触。それしかない。
元々、魔法少女は一人で完結だった。だが一人で攻守万能だと悪用する輩がいるのでその防止のために色々な措置が取られた。これもその一つだ。
魔法少女となれるのは、成人していない無垢な少女のみ。
その結果、魔法少女に二人一組で立候補すれば大体の場合承認されるような社会になった。
魔法少女には特典が多くありあたしはそれが理由で魔法少女となった。
もちろん、さっき言った性的接触も理由の一つではあったのだがそんなの口が裂けても言えない。
あたしが魔法少女になろうと思ったのも、どうやってリンに思いを告げようか、と考えて至った結論なのだった。
あれ?リンはどうしてなんだろう。
あたしがリンに”一緒に魔法少女になってくれない?”とお願いした時に、彼女は迷わずオッケーしてくれた。
どちらかというと報酬もそうだが、身体目当てと言われても仕方のないような思考が根底にあったというのも頭の片隅にはあったのでそのこともあり、彼女がどうして魔法少女になったのかは聞かずじまいだった。
そんなことを回想している間にも、リンの攻めは休む時を知らない。
あたしの乳房にしゃぶりついてみたり、揉んでみたり。
「なんかだんだんかたくなってきたよ」
そりゃそうだろうな。こんだけ好きな相手にいじられまくったらそうなるよ。
そうかと思えば静かに下腹部に手を伸ばし、あたしの下の方へ。
それはちょっと、と言おうとするもくちびるでやんわりと遮られてしまう。
その隙に彼女はあたしの敏感なところに到達してしまう。
最初は穴の周辺をいじるだけにとどまっていた。膨らんでいるところを指の腹でゆっくり押し沈めてから、離す。するとあたしの中で何かが絞り出されているかのように快楽が全身に満ち溢れてくる。
あたしが興奮しているのを見るや否や、今度は穴の入口の所に人差し指を軽く入れて、こすり上げることによって内側からも熱い刺激を与えてくる。ゆっくりだったのがだんだんと激しくなっていく。気がついたら彼女の中指まで入っているようだ。
これには耐えきれずになさけない喘ぎ声を出してしまう。
「…んっ………あっ………」
そして身体のなかで湧き上がってきた、なぜだかわからない興奮があたしを包み込み、はじけた。
そんな興奮の波に飲み込まれないようにリンにぎゅっとしがみつくと、
「こんなちょっとで達しちゃうなんて、ゆずはそうとう、えっちだね」
こんなことを言い、彼女は指にねっとりとついたあたしから出たと思しき透明な液体を迷わずその口から出した舌で舐めとる。
あたしも出来上がっちゃったから、もうただ情けなく涙を浮かべながら快楽の渦に飲み込まれるだけだった。
でも、あたしは気付いていた。悲しい真実に。
この性的接触は体力回復のためであるという事に。そして、甘い言葉の数々も同じく体力回復のための魔法の呪文みたいなものの役割を担っているだけで、別に彼女はあたしの事を性的な意味では、好きとは思っていないという事。
この一見実現したように見えた恋、それこそ単なる幻想でしかない。
ただ、悲しくなるから今はその場の感情に流されてしまおう。
「ゆず、まだ疲れているみたいだね。もうちょっと回復しようか」
そんな甘くて苦く聞こえるような言葉を彼女はまた、かけてくる。
流れを汲もう。そう決心したあたしは、
「そう。まだ疲れているみたい。今度はあたしの方から行っちゃおうかな?」
と、答える。
こうして、あたし達は傍から見ると目をそらされるような同性での行為をしながら急速に体力回復をしていったのであった。
そして始まりの状況に至る。