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悪徳領主と毒婦龍  作者: ハント
準備編
15/16

剣の練習


 野原の中心。両親らしき一組の男女が見守る中、二人の子供が向かい合っていた。

 方や12歳ほどの少年で、もう片方はまだ十にも満たない幼子である。


 しかし、その手に持つものは子供の玩具というにはあまりにも大きすぎた。


 少年が持つものは木刀。

 少年の背丈のうち、三分の二程はある木刀。

 ソレを中段に構え、相手の動向を油断なく観察していた。


 対する幼子が持つのは普通の木刀。

 しかし持ち主が幼いせいでこれもまた大きく見える。

 幼子は構えない。

 だらん、と弛緩した右腕で握った剣の先は地面に接地している。


「始め!」


 男がそう宣言すると同時に、少年は走り出す。

 とても重そうな棒を持っているとは思えない速度。

 加速の勢いを殺さず、踏み込みと共に木刀を振り下ろした。




 パコーン!


「……な!?」


 少年の木刀が当たる寸前、幼子の木刀がソレを弾き飛ばした。

 彼はただ(いたずら)に木刀を構えていたのではない。隙だらけと見せかけて、いつでも横に触れる体勢を取っていたのだ。

 カウンター狙い。

 敢えて敵を誘って一撃目を弾き飛ばし、相手の準備が整う前にこちらから一撃を叩き込む。


 木刀を突きの構えに直し、突き出そうとする。

 が、ソレが繰り出されようとした途端に動きが若干止まった。

 その隙に少年は下がりながら構えなおし、迎撃の構えに出る。


 今度は幼子が攻める番。

 彼は一足で少年に接近し、上段に構える木刀を一気に振り落とす。


「……っぐ!?」


 受け止める少年。しかし、その剣劇はあまりにも重い。

 得物も使い手も青年の方が大きく重い。だというのに、彼は幼子に力負けした。


 パコーンパコーンパコーン!


 軽く乾いたような音が響く。

 しかし、音とは違って込められている力は重く鋭い。

 何度もぶつけられる木刀。


「ふぐッ!?」


 その結果吹っ飛ばされたのは少年の方だった。

 幼子はその間にバットを振るような構えに変更。駆け出し追撃を……する前に止めた。


 少年は後ろに下がりながら木刀を構え直す。そして木刀を振るう……と、見せかけて。



「くらえッ!」


 少年は木刀で地面を掬い上げ、幼子目掛けて土をかけた。 


「うわッ!」


 幼子は裏拳で目に入るであろう土を弾き飛ばす。


 少年の目論見、砂掛けの目潰しは失敗した。

 しかし隙を作り、相手の構えを崩すことには成功。この間にケリを付ける。


「(たとえ主であろうと容赦しません!)」


 木刀を掲げて殴りかかる。

 そのまま木刀が当たるかと思いきや……。


「……ック!」


 木刀を構えながら、右前に踏み込むことで相手の攻撃を避けると同時に後ろへ回り込む。

 少年は得物を振り下ろしたばかりで隙だらけ。

 幼子は少年が構えなおす前に、体を捻って木刀を振り回し、少年の顔面を剣先でぶん殴った。


 とても幼子が繰り出したとは思えないような一撃。

 鞭のように鋭く速く、鈍器のように重く響く一撃。

 その一撃の前に、少年は倒れた。 


「そこまで! この勝負、アルコの勝利!」


 男は手を掲げてそう宣言した。 













 異世界転生最高。


 僕が―――俺がこの世界で実感しか感想はこれだった。


 この世界での俺の名はアルコ・オルキヌス。

 僻地ではあるが、それなりに広い領地を治める貴族である。

 そう貴族である。


 異世界転生といえば中世ヨーロッパ、もっといえば剣と魔法の世界だ。

 魔法。

 この世界には魔法があるのだ。

 

 人に仇す魔物と冒険者がいて、その脅威から民を守る貴族がいる。

 ただ恵まれているだけじゃなく、スリルとロマンを兼ね備えた設定。実に素晴らしい。


 お金も権力もある実家、両親や親戚に愛され、才能に溢れてる。


 神様、本当にありがとう!!



 魔法の存在と自分の才能を知った俺は歓喜した。

 貴族は総じて魔力が高く、特に俺は適正も高かった。

 そして修行にのめりこんだ。

 魔法という超常の力が使えるんだから、試したくなるって思うのは当然だろ。

 そう、たとえ悪役転生であろうとも



 この世界は前世のギャルゲーを基にした世界であり、俺はその悪役ポジションに当たるキャラに転生してしまった。

 しかしソレが何だと言うのだ。

 破滅が嫌なら主役に関わらなければ、原作に関わらなければいいだけの話。

 極論を言えば、普通に生活すればいいのだ。


「(それに今の俺には力がある)」


 そう、俺は記憶を取り戻してからずっと鍛え続けたのだ。

 このまま成長すれば、ぽっと出で力を手に入れた主人公なんざすぐに倒せる。

 俺はもう弱者ではない。奪われる側ではないのだ。





『オタクの癖に話しかけんなきも~い』


『そんなことして自分が本気でイケてるって思ってるの?』





 そうだ。僕は……俺はもうあの時の『僕』とは違う。


 顔もお金も才能もある貴族なんだ。


 もう誰にも俺をカマ野郎(ユウコ)なんて呼ばせない!!

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