08 永遠トンネル探索隊(前編)
今日は連続投稿をする予定です。更新遅くなりすみません。よろしくお願いします!
「ねぇ、りゅーくん。ここって涼しいねー! 楽しいねー!」
「…………」
「む?」
返事がないりゅーすけを不思議に思ったのか、リーナは耳元にふぅ……と息を吹いた。
「ふひゃらら」
声にならない悲鳴をもらして、りゅーすけはリーナを睨みつけた。
そんなこともお構いなしに、リーナはもう一度息を吹こうとする。
「よしもう一度! すぅ……」
「やめて! やめてったら!」
「ありゃ生きてたの?」
「何それどういうこと!?」
リーナはにししと笑うと、りゅーすけの肩へちょこんと座る。
それからぶらぶらと脚を振って、ぐいっと伸びをした。
その手がりゅーすけの頬に当たったが、痛いという感覚はなかった。むしろ触ったの? である。
りゅーすけとリーナがいる所は、この地域では有名の『根暗トンネル』だ。
あまりにも出口が見えないことから、『永遠トンネル』とも通には呼ばれている。
ーーもっと捻れよ……。そのまんまじゃんか。
りゅーすけの通学路ともなるこの永遠トンネルは、車も人もあまり通らない。というより、通りたがらない。
なんでも、昔にトンネル内で事故があったらしく、その際に亡くなった人が亡霊となってさまよっているのだとか。
そんな噂、一体誰が広めたかは知らないが、実際にいるなら少し怖い……かもしれない。
さて、ではなぜ、そんな誰もが行きたくない所にいるのかと問われれば……。
ーー洞窟みたいなところに一度行ってみたい、か……。
リーナの世界には洞窟はあるものの、一度も行ったことがないらしい。
仮に行こうにも、家族や友人に「リーナはまだ小さいからダメ!」と言われて行くことすら叶わないのだという。
最初こそ断っていたが、リーナが泣きそうになったため、仕方なく一緒に行くことになったのだ。
ーー貴重な夏休みに、僕は一体何をしてるんだ……?
家でゴロゴロ……小説ふむふむ……掃除ふきふき……。りゅーすけがしたいことは全て家に詰まっている。ゲームで言うアイテムボックスみたいなものである。……ちょっと違うか?
とはいえ、ずーっと家の中にいるのもそれはそれで嫌である。インドア派ではあるが、外が嫌いというわけでもないのだ。
「ねぇねぇ、りゅーくんはリーナのこと見えるの?」
「み、見えるわけなかろう! こ、この暗闇の中、み、見えるわけなかろう! なかろう!」
「なーんか変な口調。いつもみたいにオッス俺りゅーすけ! の方が、リーナは好きなんだけど」
「普段の僕もそんな口調じゃないけどね!」
「そうかな?」
「そうだよ!」
ーーボケてるのか素なのか……。いや、絶対素だなこれ。
りゅーすけは勝手に確信して、まぁいいか、と頷いた。
「リーナの世界の洞窟は、こう、『青晶』っていうのがあって、全然暗くないって聞いたんだけど……」
「ここは洞窟じゃないし……って、なにせいしょーって」
リーナはりゅーすけの頬に指をビシッと差した。
「青く光る結晶のことだよ! 洞窟には沢山生えてる? 刺さってるらしいよ。そのまんまーだけどね」
「なんか堅苦しい名称だね。ダイヤモンドとか、ルビーとか、そういうやつはないの?」
「ないですねー」
「ないですかー」
りゅーすけはガクンと肩を下げた。
ーー結晶とか鉱物の捻りのある名称が好きなんだけどなあ……。
そのまんまの名称は大嫌いなりゅーすけなのだ。
「まぁまぁ、とにかく、気を取り直して進もう! おー!」
「お、おー!」
乗り気ではないりゅーすけと、ハイテンションなリーナのトンネル探検はまだまだ続く。
よければブックマーク・感想などよろしくお願いします!
感想はちょっと……という方は、下の星が5つある所から選択していただけると嬉しいです!