07 家族の違い
更新遅くなってしまいすみません! 改めてよろしくお願いします。
りゅーすけは裏口の玄関から外に出ると、凝り固まった肩をもみもみと揉んだ。
「りゅーくん、肩こってるの? おじいちゃんだね!」
「嬉しくないしせめておとーさんにしてほしかった」
りゅーすけは肩をぐるぐると回すと、生け簀へと目を向けた。
ちょろちょろと流れる水の音は、りゅーすけの荒れた心を癒す落ち着く音である。……別に荒れてなどいないが。
「りゅーくんのお庭ってとっても広いよねー。この池? はどんな時に使うの?」
「ええっと、花や作物に水をあげる時とかによく使うよ。あと、これは池じゃなくて生け簀だけどね」
りゅーすけはじょうろにたっぷりと水を汲んで、近くの花へかける。
しばらくかけていると、そこから小さな虹が出た。リーナは不思議そうに目を丸くしていた。
「魔法を使えば、もっと楽ーにやれるのになあ」
「あはは……僕たちは魔法は使えないからね?」
「ありゃまそうでした。おっほっほ」
「……またパパのマネ?」
「ううん、ママ!」
「違いがよくわからん」
りゅーすけはじょうろを地面に置くと、水に濡れて湿った服を、タオルで軽く拭いた。
リーナはというと、生け簀に手を入れてびしゃびしゃと左右に揺らしていた。
すると、なにかに気がついたのか、リーナは大きく目を見開いてりゅーすけを呼んだ。
「どうしたの、リーナ? カエルでもいた?」
「おっきい魚がいるよ! この魚なになにー!?」
見ると、そこにはたしかに大きな魚がいた。全身が赤色ではあるが、時折黒い箇所もある。
「ああ、これは鯉だよ」
「こい? りゅーくん魚に恋したの!?」
「違う違うそっちじゃない」
ーーというか恋したくない!
……別になにか過去にトラウマがあるわけではない。りゅーすけにとって、恋愛など必要がないと思っているだけである。
リア充がイチャイチャする姿を見ても、ふーん程度にしか思わないのだ。
「鯉っていうこっちの世界にいる魚だよ。まぁ恋となにか関係があるとは聞いたことがある……」
「美味しいの!?」
「リーナは食欲旺盛だな! 腹減ってるのか?」
「そんなわけなかろう!」
りゅーすけはじーっとリーナの顔を見つめる。……口からジュルリと涎が垂れたような気がするが、まぁ気のせいだろう。
「これは食用じゃない。飼ってるんだよ」
「かう? これまたよくわかんない言葉……」
「要は生き物を育てるってことだよ。そっちの世界にはそういうのないの?」
ーーいや、あるわけないか。
様々なファンタジー小説を読んできた身からすれば、動物、またはモンスターを飼い慣らそうとする展開は一度も見たことがない。争うか仲良くなるかの二択である。
「生き物はみーんな家族だよ? 例え血が繋がっていなくても、種族が違くても、その子が大切なら家族! 飼うのはなんか嫌だ」
ーーみんなが家族、か。
こっちの世界とは別の世界にいるのだから、思想や価値観も違うだろうが……りゅーすけは少しだけ驚いた。
大切ならば家族。血が繋がっていなくとも家族。種族が違かろうが家族。家族家族家族……。
ペットはもちろん、おそらく奴隷もいない。そんな誰もが平等な世界にリーナは住んでいる。
ーーペットも家族だけど、リーナの考えとは決定的に何かが違うような気がする。
それは言葉にはしにくく、どう伝えれば良いのかも分からない。
りゅーすけは廊下に置いてあった鯉のエサを取りに行くと、大きな一粒を生け簀に投げる。
鯉は待ってましたと言わんばかりにガブリとその一粒に食らいついた。
りゅーすけはさらに沢山のエサを投げて、鯉に食べさせる。リーナははそれを無言でじーっと見ていた。
「りゅーくんにとって、この子は家族じゃないの?」
「いいや、家族だよ。どんな形であれ、こっちの世界ではこういうのも家族なんだよ」
「なるほど……勉強になった!」
リーナは元気よくそう言うと、りゅーすけが持っていた鯉のエサを一粒持って、恋の手前にぽちょんと投げた。
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