04 課題中はお静かに……
早朝、目が覚めたりゅーすけは、お母さんの朝ごはんを食べたあと、階段を一段飛ばしで上り、自室へと入っていく。
そこには、小さな手でカーテンを開けるリーナがいた。
一生懸命開けようとするリーナを微笑ましく思いつつ、軽く挨拶をした。
「おはようリーナ、今日から夏休みだよ」
「あ、おはよー。というか今日からなんだ。てっきりもう始まっているのだとばかり……!」
リーナはなんとかカーテンを開け終えると、ふひぃと吐息をついた。
「それで、りゅーくんはこれから何をするの? 本を読むの?」
「それもいいかもしれないけど……」
言いながら、りゅーすけは黒色のリュックサックから一冊の薄い本を取り出す。
「その前に課題をやらないとね」
「課題……? お勉強ってこと?」
「そうだよ。リーナの世界でもそういうのないの?」
リーナはふるふると首を振った。
「お勉強はパパから教えてもらうんだ〜。丁寧な言葉遣いや計算とか、色々とやるんだよ」
「……ということは、学校とかないんだね」
りゅーすけの言葉に、リーナは小首を傾げた。
「学校……? よくわかんないけど、りゅーくんは行ったことあるの?」
「そりゃあね。毎日のように通っているよ」
リーナはよく分からないのか、腕を組んだ。
りゅーすけはひとつ指を立てる。
「学校は、簡単に言えば同じ歳の人が集まって、一緒に勉強する場所だよ。計算は計算を教えてくれる先生っていう人がいて、文字は文字を教えてくれる先生がいるんだよ」
まぁ、もっと詳しく説明をしたいが、リーナがイマイチよく分かっていなさそうなのでこれくらいにしておいた。
「パパやママには教えてもらえないんだね〜。きょーいくだけでもこんなに違うのか〜」
リーナはメモ用紙にふむふむと頷きながら書いた。
「あ! ならリーナは迷惑にならないように静かにしてないとね!」
「うん。できればそうしてくれると助かる」
「御意!」
ーー流行ってんのかな、それ……。
りゅーすけは苦笑すると、椅子に座り、課題に取り組んだ。
「……とりあえず、今日はこれくらいでいいかな」
今日の分の課題を終わらせて、りゅーすけはぐいっとのびをした。
りゅーすけは一気にやるのが苦手である。そんなに集中も気力もない。よくもまあ一日で終わらせられる人がいるなあ……とりゅーすけは苦笑する。
何事もコツコツやった方が正直楽なのに……とりゅーすけは思うが、それも人それぞれなのだろう。
りゅーすけはシャーペンに芯を入れて、椅子をくるっと一回転した。
ーーなんか静かだな……。リーナどこか行っちゃったのかな……。
というのも、りゅーすけは一度もリーナに邪魔されずに課題が出来たのである。
てっきり肩に乗って見てきたり、魔法でなにかしてくるのではと思っていたのだが……。
りゅーすけはきょろきょろと部屋を見て……ベッドに止まり、思わず口元を緩めてしまう。
そこには、枕の上で寝息を立てて眠るリーナがいた。
口元にはよだれを垂らしており、時折「静かにしなきゃ……」とボソッと声を出していた。
りゅーすけはベッドに座ると、優しく微笑み、
「ありがとね、リーナ」
と小声で感謝を伝えたのだった。
今日から夏休み編です。りゅーすけとリーナの何気ない毎日をお楽しみに!
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