21 りゅーすけとリーナ(前編)
川を越え、橋を渡り、住宅地を彷徨う。
りゅーすけの目線の先にあるのは、麦わら帽子。両親から貸してもらった古びた麦わら帽子だ。
りゅーすけにとって、麦わら帽子はそこまで大切な物でもない。……かといってぞんざいに使っていたわけでもない。
りゅーすけがこの手に掴みたいもの……それは、麦わら帽子にいるであろうリーナである。
急な突風に吹き飛ばされ、リーナは麦わら帽子に捕まっている。ここからではあまりにも小さくてよく見えないが、きっとそうなのだろう。
ーーにしても、こんなに遠くまで飛ばされるか普通……?
りゅーすけがいる場所は、祭り会場からやや離れた位置にある田畑。いくら突風が強かろうと、ここまで飛ぶのはおかしいのではないか。
「もしくはリーナが……」
と言ったところで、りゅーすけは足を止める。
というのも、さっきまで追っていた麦わら帽子が、森……というより裏山へ入っていったからである。
ーー不気味だなぁ……。
りゅーすけはあまりの暗さに身震いする。
しかし、べしべしと頬を叩くと、懐中電灯を持って、重い足取りで暗闇を目指す。
「あのトンネルより暗いぞ……」
りゅーすけはトラウマな永遠トンネルを思い出す。
あのトンネルに比べると、この山道は夜ということもあってかやはり暗い。
おばけが出てきそうで……じゃなくて、クマが出てきそうで足元が震える。
「お、おばけなんて怖くない……怖くない……」
ガサッ!
「ふぎゃあ!?」
りゅーすけは音に驚き、思わず尻もちをついた。
りゅーすけは音がした方向へ地面に手をついてペタペタと歩いて近づいていくと、そこには低木が植えられていた。
しかし、ただの低木ならまだしも、頭には麦わら帽子が落ちていた。
りゅーすけは麦わら帽子にちょんちょんと触れる。……触り心地といい見た目といい、りゅーすけの麦わら帽子と酷似していた。
りゅーすけは麦わら帽子をぱっぱと払い、内側を懐中電灯で照らす。
しかし、そこにはリーナはおらず、カエルがケロケロと鳴いているのみ。
りゅーすけはカエルを人差し指に乗せて、麦わら帽子を被る。
カエルはケロロ! と鳴り、草むらへ飛んでいってしまった。
「リーナはどこに……」
てっきり麦わら帽子の傍で待っていると思っていたのだが、どうやら違うらしい。
りゅーすけに何も告げずあちらの世界に帰ったのか、もしくは山道に迷っているのか……。
りゅーすけが考え込むなか、またもやガサッと音がする。
りゅーすけはヒッと軽く悲鳴をあげて、懐中電灯で照らしてみる。
そこには、またもや低木。しかし、さっきの低木に比べて葉が枯れており元気がなかった。
りゅーすけは地面に落ちてある木の枝を持ち、低木をじーっと睨みつける。
「ヒックヒック……」
「やっぱりリーナか……」
低木から現れたのは、ぼさぼさの髪型をし、涙目になっていたリーナだった。
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