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僕と妖精さんの夏休み!  作者: 岩田凌
夏休み編!
22/29

16 りゅーくんの友だち

ルチルがあちらの世界へ帰ってはや一日、リーナは不満げにビー玉を蹴っていた。……どこから持ってきたのだろうか。

「パパってば、リーナに何も言わずに来て、何も言わずに帰るなんて……。せめて帰る時くらいリーナに言ってよ!」

「まあまあ、パパもお仕事が忙しい中来で……」

「ぶんぶん!」

りゅーすけがそう言っても、リーナはぷくーと頬をふくらませたままだった。

ーー昨夜からずーっと同じようなことを聞かされる身にもなってみてくれ……。

リーナのご機嫌が斜めなのは、なにも今朝から始まったことではない。

りゅーすけが睡眠中でも、耳元で「パパめパパめ……!」と囁いてくるのだ。

それも、独り言なのかと無視していたら、「りゅーくん聞いてるの!?」と言ってきたのだ。

せめて大好きな睡眠くらいさせてほしいものである……。

そのため、りゅーすけの目元はクマができておりやたら眠い。いや、それはいつものことなのだが、まあそれはさておき……。

ーーそういえば、リーナパパからなんかもらったっけな。

りゅーすけはビニール袋から丸い食べ物を手のひらに転がす。

見たところ飴のようにも見えるが、所々に変なトゲのようなものが刺さっている。毒々しい色のため、りゅーすけは思わず「うわっ」と口に出した。

「りゅーくん聞いてる!? ってそれは?」

リーナはりゅーすけが手のひらで転がしていた、飴のようなものをじーっと見つめる。

「あぁ、リーナのパパにもらったんだよ。リーナが好きな食べ物だって……ごわっ!?」

りゅーすけが言い切る前に、リーナはビー玉をひょいっと上に投げる。それから、りゅーすけの手のひらと一緒に、食べ物をパクリと食べる。

「あの、リーナさん、痛いんですけど……」

りゅーすけは噛まれた手のひらをハンカチで拭きながら、涙目で答える。

しかし、リーナはそんなことなど気にも留めず、もう一個! とでも言いたげな顔でりゅーすけを見つめた。

りゅーすけは吐息をつくと、袋から食べ物を上げようとし……。

「なにやってんだ、りゅーすけ」

「……ゆうや?」

部屋の前では、いつの間にか友だちであるゆうやがじーっとりゅーすけを睨んでいた。


「……ていうか、ゆうやは家からこっちまで遠いだろ? なんで来たんだよ」

「来ちゃ悪いか?」

「別にそうは言ってないけど……」

りゅーすけは、ゆうやが持ってきたスイカを一口食べてから麦茶を飲んだ。

ーースイカ美味し……。

「近くにばあちゃん家があるんだ。それでついでにと思って、お前ん家に来てやった」

「わざわざ様子を見に来てくれたってわけねー」

「違うわ。……それで、りゅーすけ。お前さっきまでなにやってたんだ?」

ーーやっぱり聞かれるよなぁ……。

りゅーすけはどうしたものかと首を傾け、梅干しをぱくぱくぱくぱく……。

ーー本当のことは言えないからな……。

リーナと出会ったあの日、他の人には見られてはいけないと言っていた。

それはつまるところ、りゅーすけがゆうやにリーナのことを教えてはいけないという意味にもなる。

本来ならば、リーナのことを教えてあげて、友だちになってほしいのだが、約束が最優先である。

りゅーすけはたまたま近くに転がっていたビー玉を気づかれないようささっと持つと、机にころころと転がした。

「ビニール袋にビー玉があってさ。なんでだろうなあって考えてたんだよ」

「お前は相変わらずどうでもいいことを考えるよなあ……」

「僕にとっては計算式を考えるより遥かに大事なんだよ」

「数学嫌いめ」

「うっさい」

りゅーすけはゆうやの頭を軽く叩き、スイカを一口食べた。

ーーとりあえず誤魔化すことはできたかな……?

りゅーすけはビニール袋に入っているリーナにVサインを送る。

リーナは暑いからなのか水魔法を使って、暑さをしのいでいた。……それ以上使うとこぼれそうなのでやめてほしいが。

ゆうやは「さってとー」と言いながら、似合わない派手なバッグを持った。

「もう行くのか?」

「このあとはひいおじいちゃんの家に行かんと行けないしな。悠長にしてられん」

「そっかー。……スイカありがとな。また来年もよろしく」

「誰が持ってくるか! そんじゃあな」

そう言って、ゆうやは部屋から出ていってしまった……かと思いきや、扉を少し開けて、なぜかVサインをした。

「祭りの日は、一緒に屋台めぐろーぜ!」

そう言って、ゆうやは今度こそ扉を閉めて、階段を降りていった。

リーナはビニール袋からひょこっと顔を出すと、何やらにやにやしながらりゅーすけを見た。

「な、なんだよ……?」

「りゅーくんって、リーナ以外にも友だちがいたんだね!」

「失礼だな!?」

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