表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
僕と妖精さんの夏休み!  作者: 岩田凌
夏休み編!
20/29

15 ちょっぴり寂しい……?(後編)

それからというもの、ルチルはリーナのあーんなことやこーんなことを早口で教えてくれた。

小さい頃のリーナは無口で寂しがり屋だったことや、何もないところでよく迷子になっていた、などなど……。

そうやってリーナの様々なことを話しているルチルは楽しそうで、りゅーすけもついつい「他には?」と聞いてしまった。

話が終わると、ルチルは疲れたのかぐびぐびと麦茶を飲んだ。

ーー冷蔵庫にはなかったぞ? どっから持ってきたんだ?

りゅーすけは一瞬考えたがすぐにやめる。細かいことなどどうでもいいのだ。

「りゅーすけ殿は、リーナといて楽しいか?」

「当たり前ですよ。リーナといると時間を忘れるというか……」

「ほほう、つまりは恋しちゃったと?」

「しませんよ! あいつとは友だちだって言ったでしょう?」

慌てて首を振るりゅーすけに、ルチルは疑わしげな目を向ける。

そもそもりゅーすけは、恋がいったいなんなのかよく分かっていない。一目惚れ=恋だと誰かに教わるでもなく勝手に思っている。

リーナに一目惚れをしていないため、恋ではないと確信しているのだ。

「リーナは純粋無垢だからな。変な男に声をかけられないか心配だ……」

「いや、それはたぶん……」

りゅーすけは例の鍵の件を思い出しそうになり、両手で顔を覆った。

「オモイダスナオモイダスナ……」

「ふむ、なにかトラウマでもありそうだな……。この話はやめにしよう」

「そうしていただけると助かります……」

ルチルはわざとらしく咳払いをすると、そーっと扉を開けた。

「……なにかありましたか?」

「いいや、なんでもない。気のせいだったようだ」

「はぁ……?」

なにか音でも聞こえたのだろうか。りゅーすけにはミンミンゼミの鳴き声しか聞こえなかったが……。

ルチルは机に座り、物珍しげに部屋を見た。

ルチルが座る机には、りゅーすけがあらかじめ持ってきていた小説や缶コーヒーはもちろん、綻びのあるくまのぬいぐるみや、触ると「あざす!」と言う、奇妙なおもちゃが置いてある。どちらも、りゅーすけが小さい頃によく遊んでいた物である。

「この机もそうだが、部屋もやけに散らかっておるな」

「ストレートにいいますね……」

「ほっほっほ! 私は嘘をつけないのだよ」

ルチルはなぜか誇らしげに胸を叩いた。

ーーそういえば、リーナって一度も嘘ついたことないよな。親子だなあ……。

そんなルチルを、りゅーすけはニマニマとした顔で見つめる。

恥ずかしくなったのか、ルチルは麦茶を飲んで話題を変えた。

「私の刎は透明でな。リーナはもちろん、私も見えないのだ」

「そ、それって大丈夫なんです? 誤って物にぶつかったりとかは……」

心配するりゅーすけに、ルチルはひらひらと手を振った。

「あぁ大丈夫大丈夫。透明といっても、私がくしゃみをすれば虹色になる故」

「なんだそのシステムは!?」

ルチルにとっては、当たり前なのだろうが、数々のファンタジー小説を読んできたりゅーすけにとっては正直がっかり感が否めない。妖精=神秘的なイメージが薄れていく……。

「ほっほっほ! りゅーすけ殿はキレ味も良い。リーナが楽しいと言っていたのもよく分かる」

「え? リーナそんなこと言ってたんですか。いつもは言わないのに」

「言うのが恥ずかしいだけなんだろうなー。リーナはちょっぴり恥ずかしがり屋でもあるから」

ーー恥ずかしがり屋なら身体を隠せよ……。

とツッコミたかったが、それ以上に、リーナが言っていたことに、りゅーすけは嬉しさを隠せないでいた。

というのも、リーナは一度もりゅーすけに楽しいと言ったことがなかったのだ。楽しんでいるのだと分かっていても、本当なのか心配になる時もあった。

それがついに晴れて、りゅーすけはたまらなく喜んでしまったのだ。

「りゅーすけ殿」

ルチルに急に呼ばれ、りゅーすけは「はひっ」と声が裏返る。

さっきまでのルチルとは違い、真面目な表情でりゅーすけを見つめていた。

りゅーすけは背筋を伸ばし、思わず顔を強ばらせる。

「リーナは……我が愛娘は、りゅーすけ殿との生活を毎日楽しんでおる。どうかあの子に、色々なことを教えてやってほしい。……それと、夏休みが終わる最後まで、あの子のそばにいてあげてほしい」

「…………」

ルチルは刎を広げて、りゅーすけの目の前へ行く。そして、ゆっくり頭を下げた。

しばし経つと、ルチルは頭を上げて、複雑な表情でりゅーすけを見た。

「なんせ、あの子はりゅーすけ殿ともっと仲良くなりたいのだからな」

そう言って、ルチルは小さな眩い光とともに、その場から姿を消したのだった。

よければブックマーク・感想などよろしくお願いします!

感想はちょっと……という方は、下の星が5つある所から選択していただけると嬉しいです!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ