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僕と妖精さんの夏休み!  作者: 岩田凌
夏休み編!
13/29

11 懐かしテレビゲーム

りゅーすけは毎日行っている筋トレをしながら、ある考え事をしていた。

ーーリーナって思った以上に怪力っていうか、握力あるよなあ……。

それは、以前、りゅーすけがリーナと変な勝負をしていた時のこと。

一瞬だけリーナに頭をガシッと掴まれたことがあったのだが、割と握力が強かった。

それも頭がピキピキと怪しい音をたてたため、りゅーすけは「殺意あんのかな」とも思ってしまった。

ーー小さいからってだけで完全に決めつけてたけど、さすが異世界からの訪問者だなあ……。

りゅーすけが腹筋をしようとしたところで、リーナが「わあ!」という声とともに額に落ちてきた。

「りゅーくん、きんとれ? するのはいいけど、服とか脱がなくていいの? 汗かいちゃうよ?」

「僕は服を脱いで筋トレするのは嫌なんだよ」

「どうして?」

ーーなんでそんなに気になるんだ……?

リーナの知識欲はなかなかのもので、毎日のように「なんで? どうして?」と聞いてくる。

特にウザイなあとは全く思わない。というか、むしろ尊敬してしまう。

動画投稿サイトや本でよくある、知って得しないような物は、りゅーすけは基本的に興味が無い。

ならば、知って得する物はと言われれば、それも正直あまり興味がない。

そのため、リーナの行動はちょっぴり新鮮なのだ。

リーナはなにやら意地悪そうな顔で、にやりと口元をゆがめた。

「りゅーくん、お腹触ってみてもいい?」

「……へ? なんて?」

「だから、お腹触ってみてもいい?」

「ダメです!」

「ええ〜!」

リーナはむすっと頬をふくらませて、りゅーすけの鼻を思いっきり摘んだ。

「いへー! はか! ほひ!」

「いてー! バカ! おい!」

「ははふはんへほははらへはいほ!」

「鼻を摘んでも触らせないぞ!」

「ふーやくひはふてひひかは!」

「つーやくしなくていいから!」

ーーどんだけ触りたいんだリーナは!?

リーナの知識欲は、時に変なところででることを忘れてはならない。


結局、リーナはお腹を触らせてもらえずしばししょほんぼりとしていたが、梅干しをあげたことで機嫌を取り戻してくれた。チョロい。

りゅーすけは未だヒリヒリする鼻を撫でながら、リーナを机に座らせた。

「ご、ごめんなさい……」

「別に謝らなくてもいいって。……それで、ひとつ聞きたいことがあるんだけど」

「聞きたいこと?」

不思議そうに首を傾けるリーナに、りゅーすけは人差し指を立てた。

「リーナってこういうの持てる?」

言いながらりゅーすけが持ってきたのは、テレビリモコンだった。

リーナは初めて見るテレビリモコンに触れ、途端に目を光らせた。

「りゅーくん、この四角いところ、何度も押したくなっちゃうね。名称は……ポチポチ機かな?」

「残念ハズレ。正解はテレビリモコンだよ」

ーー正式名称、本当にこれであってるのかな?

りゅーすけは不安になりながらも、リーナにテレビリモコンを持つようお願いする。

すると、リーナは当たり前だと言わんばかりに、すんなりテレビリモコンを持ち、人差し指にのせてくるくると回した。

「りゅーくん、リーナがちっこいからってあまく見すぎだよ?」

「ご、ごめんごめん。けど、これが持てるなら大丈夫そうかな」

「……? なにかするの?」

りゅーすけはふっふっふっと笑ったあと、テレビリモコンをリーナと同じようにクルクル回す。

「これからテレビゲームをやるんだよ」

「てれびげえむ?」

りゅーすけの人差し指から、テレビリモコンはすぐに床へ落ちた。


「ふぬぬぬぬぬ……!」

「ふぐぐぐぐく……!」

りゅーすけとリーナは、片手に白色のリモコンを持っている。視線はテレビに釘付けであり、両者真剣な表情でひたすらリモコンを振っていた。

あと少し……というところで、リーナは負け、りゅーすけが勝利のガッツポーズをした。

「よし! これで六十八回連続勝利〜」

「りゅーくん反則しないでよ! そういうのいけないって友だちが言ってた!」

「人聞きが悪いなー! 反則してないだろ? これは僕の実力なんだよ! ふっふっふっ」

「むむむぅ……」

りゅーすけは鼻を伸ばして、渾身のドヤア! 顔でリーナを見る。……ちょっとウザイ。

リーナはぷっくーと頬をふくらませて、りゅーすけの頭をぽかすかと叩いた。

「もう一回! もう一回だけ勝負!」

「いいぞ! ……だけど、勝つのは僕なんだよ!」

「なにをー!」

お互い睨みあってから、再びゲームがスタート。

りゅーすけとリーナは思いっきりリモコンを振った。

無心で振り、無心で振り……勝者はまたもやりゅーすけだった。

「よし! 六十九回目〜」

「もう! りゅーくんのバカー!」

「え? ふぎゃー! 鼻をつまもうとするなー!」

りゅーすけは飛んでくるリーナをしゃがんで避ける。

今度は下から来たので、上へ跳んでなんとか避けきった。

そんなこんなが続き、りゅーすけとリーナは疲れて床に寝てしまった。

「はぁ……はぁ……」

「ひぃ……ひぃ……」

互いに聞こえるのは、疲れた吐息と、悲しそうに鳴くヒグラシのみ。

りゅーすけはリモコンを胸に抱き、小さく笑った。

「りゅーくん?」

「いや、こういうの久しぶりだなーって」

りゅーすけはリーナへ視線を向けてもう一つのリモコンを持った。

「誰かとこうしてテレビゲームでワイワイする。こういうの、ここ数年なくてね。」

昔はつるんでいた友だちも、今はもうせいぜいメールでなんとなしに連絡を取るくらいで。

中には、アドレスを交換したっきり、互いに送りもしない人もいる。

みんな変わっていく。進むべき道も違うし、みんなスマホゲームで、それもオンラインゲームで遊んでいる。今のように、誰かの家に来て遊びに来るものは少ないだろう。

「やっぱり、誰かと童心に返って遊ぶのもいいもんだよなあ……」

「りゅーくん……」

りゅーすけはリモコンを寄せて、懐かしそうににこっと笑うのだった。

ちょっぴりノスタルジー(?)になる作者です。

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