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僕と妖精さんの夏休み!  作者: 岩田凌
夏休み編!
12/29

10 鍵を閉めて!

「はぁ……やっぱりお風呂はいいなあ……」

りゅーすけはドライヤーで髪を乾かしながら、ふとそんなことを呟いた。

「どうしたの、りゅーすけ。普段、そんなこと言わないじゃない」

「どこかぶったか? ほれ、父さんに見せてみろ」

「二人して酷いよ! 別にこれくらい言ったっていいじゃんか!」

りゅーすけは両親に軽くツッコミを入れて、タオルを首にかけた。

りゅーすけの両親は、りゅーすけすら思わず一歩後ずさるほどの心配性である。

以前は「りゅーすけは太陽に当たると危険だ!」とか言い出して、両親揃って仕事を抜けて学校まで来たことがあった。

ーー太陽に当たると危険って、吸血鬼じゃないんだから。はぁ……。

りゅーすけはタオルを洗濯機へポイッと入れて、「おやすみなさいー」と言いながら頭を下げる。

両親は何故か拍手をして、何故か「気をつけるのよ」と言って、何故かそろってくしゃみをした。

そんな息子から見てもちょっぴり珍しい両親に別れを告げ、りゅーすけはスタタと階段を上っていく。

以前は一段飛ばしで上っていたが、リーナに「危険なことはしてはいけません!」と叱られたため、今は全くしていない。

ーー一段飛ばしの方が早いのになあ……。

なんて思いつつ、りゅーすけは自室の扉を勢いよく開ける、と……。

「あ、やっほーりゅーくん。お風呂気持ちよかったー?」

そこには、どこからか持ってきた小さな桶の上で、髪を洗う妖精がいて……。

「うーん……」

「りゅーくん!?」

りゅーすけはドサッとその場に倒れてしまった。


目が覚めると、そこには毎日のように見る天井があった。

りゅーすけは上半身を起こすと、ぶるんぶるんと頭を振った。

ーーあれ? なんで僕はここで寝て……。

りゅーすけの記憶は扉を開けたところから完全になくなっている。扉からベッドに来る間、一体なにがあったのだろうか。

「よかったー。りゅーくん、急に死んじゃうからびっくりしちゃったよ〜」

「勝手に殺すな」

「えーっと……ドヤア?」

「違う、ごめんなさいだよ」

「ご、ごめんなさい!」

リーナはりゅーすけの目の前でぺこりと謝罪。りゅーすけはよく出来ましたと頭を撫でる。

ーーん? 頭? 頭……頭……髪……髪……あ。

りゅーすけはさっきまでの記憶を取り戻したのか、近くにあった真っ黒な袋を頭に被せた。

「へ? りゅーくん!?」

突然の奇行に、リーナは思わず大きな声を上げてしまう。

ーー平常心だ! これはたぶん思い出したらいけないやつだ!!

そう、りゅーすけは決してさっきまでの出来事を思い出したわけではない。……いや、少しは思い出してしまったが、完全に、というわけではないのだ。

「りゅーくん! 危険なことをしてはいけません! 前も言ったでしょ?」

「いいや! 今回は頼むからこのままにさせて! お願いします!」

「むーりーでーすー!」

言いながら、リーナはりゅーすけの被っている真っ黒な袋を取ろうとする。

「ふんぐぐ……」

すかさずりゅーすけも、真っ黒な袋を引っ張る。

「なにをー!」

「こんにゃろー!」

両者互角。一進一退を繰り返している。……これはなかなか酷い光景である。

しかし、りゅーすけは疲れたのか、ついに袋を取られてしまった。

勝者はリーナ。りゅーすけは「うわあああ」と悲鳴をあげながら顔を覆った。

ーーなんでリーナはそんなに怪力なんだよおおお!

……負けて悔しいわけではなかったようだ。というかいつから勝負になっていたのだろうか?

「それで、りゅーくんはどうして袋を被ったの? あとなんでさっき死ん……気絶しちゃったの?」

「えぇ……言わないとダメ?」

「お互い困ったことがあったら相談するって言ったのはりゅーくんでしょ?」

ーーあー、そんなこと言った……言ったっけ?

「悩みがあるなら言って。リーナ、相談に乗るから」

リーナはいかにも心配そうな顔で、りゅーすけをじっと見つめる。

悩めるりゅーすけになった要因はリーナなのだが、どうやら分かっていないようである。

りゅーすけはひとつ息をつくと、ベッドの上で胡座をかいた。

「リーナはもうちょっと自分を大切にした方がいいと思う……」

「……? 大切にしてるよ?」

「そういうことじゃなくてですね……」

りゅーすけはぽりぽりと頭をかいた。

「前に言っただろ? その……か、身体を洗う時は、ちゃんと鍵を閉めてから洗えって」

「あー、そういえばそんなこと言ってたね」

リーナはなるほどと手を叩いた。

とはいえ、リーナがそれを怠るのも仕方がない。

リーナのいた世界、というより妖精は、異性に対して裸を見せるということに羞恥心がないのだそう。

もちろん身体を洗う際も、特に周りの目は気にせず、鼻歌を混じえて洗うのだ。

妖精の文化としてそれが当たり前。それを直せと言われても、リーナにとっては難しいのかもしれない。しかし……。

「他の世界や国ではそういう人がいるのも分かってる。けど、僕のいる国はその……」

「その?」

「と、とにかく! 恥じらいを持てとは言わないけど、ちゃんと鍵は閉めてね! おやすみ!」

りゅーすけはもう色々と恥ずかしくなり、布団の中に潜ってしまった。

「りょーかい! 次からは服を着て洗うね!」

「そういうことじゃなーい!!」

こういうの書くのは初めてです…………はい。

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