青薔薇を摘み取る魔女
セーフ!危ねぇ、家紋様にメッセージで聞いたのに企画に参加出来ないってなったら恥にも程があるってもんや。
あ、それと今三作品が若干失踪気味ですが……落ち着いたらまた書きます!
なんで、これが書けたんや!って質問は無しで!空き時間にちまちま書いていたものなんや!
その時間に書け!って言うのもなし!作者にも気分の振れ幅というものが存在します。
私には妹がいる。私と年は一つしか離れていないが私とは違ってとても可愛らしい女の子だ。可愛らしいだけでなく人を骨抜きにし魅了にする、そのような雰囲気を纏っていた女の子だった。
妹は聡明で物覚えがよく、私が3歳で彼女が2歳の時には舌足らずながらも理路整然とした内容を話したと私の両親は言っていた。可愛らしく智い妹なので両親からはひどく可愛がられた。私も両親から愛情を注いでもらったが、妹は私の比ではなかった。
そんな妹に嫉妬をしたりもした。でも、私の中で芽吹いていた嫉妬の感情はすぐさま霧散することとなった。妹は不出来な姉に優しかった。最初の頃は反骨精神があり、妹の優しさも演技だと思っていた。けれど、妹は常に私に優しかった。御伽噺に出てくる意地悪な役の人達と違って妹は私にも優しかった。そんな清き心を持った妹を私が敵視することもバカバカしくなった。妹が特別扱いを受けることにも寛容になったと思う。あんなに内面もキレイな女の子に悪意を向けていたことがある私のような汚れた性格の持ち主を妹よりも可愛がることなどあるはずがない。異常者でもない限り。
才色兼備な妹に憧れ、次第に好きになっていった。私は同性愛者ではないので姉妹としてだ。これが妹を好きになることかとようやく友達のことを理解できた。私も彼女のことをもう笑えなかった。
そのことを聞いた彼女は「でしょ! やっぱり妹は正義なのよ! ようやくあなたも分かってくれたのね! 特にお姉ちゃんって言って後ろをトコトコついてきてくれるところが可愛いのよ! 貴女もそうよね?」と喜色満面に言ってきたが今までのように腹の底から笑えず曖昧な笑みを浮かべることしか出来なかった。私の妹も姉様と言って私を慕ってくれており、そこが可愛いポイントの一つだと思っているから。
そして私は16歳、妹は15歳と立派な淑女と呼べるような年齢になった時に私達の環境に変化を迎えた。
私達の両親は平民で、商売を営んで生計を立てている。両親の仕事を私と妹は毎日のように手伝っている。王都には学校と呼ばれる教育機関があるのだが、そこに通えるのは王侯貴族や豪商の令息令嬢のみで、私達のような日々を暮らすので精一杯な平民には縁もゆかりもない話だ。
だけれど、妹は違った。私の愛してやまない妹には天性の才能があったのだ。
妹には100年に一度現れるとされる災厄に立ち向かう力が宿っていたのだ。災厄に立ち向かう存在を聖女と呼ぶ。才女な妹はよく御伽噺に登場するような存在だったのだ。
妹は昔から何事も私より優っていた。それは魔法に関しても例外ではなかった。私が使えるのは炎魔法と氷魔法の2種類だけ。それも、初歩中の初歩の物だ。だが、聖女である妹は歴代の聖女様達と同様に全ての属性の魔法が扱えた。それも、私では到底理解できないような高等なものまで。だから、妹が聖女であると私が住む国の宮廷からの遣いのお方から伝えられても驚かなかった。そして、妹が聖女だと分かり誇らしくすら思った。
だが、聖女である妹は私と離れて王都で暮らさなければならない。大好きな妹ともう会うことが出来ないかもしれない。そう思い、離れ離れになることは悲しかった。
それは妹も同じようで、最初は見知らぬ土地、王都へ行くことに期待を膨らませていたようだが、遣いの者からそのことについて伝えられると泣き始めたのをよく覚えている。私達家族との別れを悲しんでくれたのがとても嬉しく思うが、妹はこれからこの国に住む人のために尽力することになる。私達如きの我儘で妹をこの家に押し留めるようなことがあってはならない。だから、歯を食いしばって必死に涙が流れないように堪えた。
そして、一日の猶予を貰い最後になるかもしれない家族の団欒を過ごした。
翌日、妹との永遠の別れが訪れた。最愛の妹が馬車に乗りどんどん家から遠ざかっていく。そんな中、妹は健気にも私達3人に向かって涙を流しながらも手を振り続けてくれた。私はその姿に不意を突かれ流すまいと決めていた涙が頬を伝った。妹を笑顔で見送ることは出来なかった。
◇◇◇
「ふんふふーん♪」
私は好きな歌を鼻歌で歌いながらこれまた好きな花に水をあげていた。花全般が好きだが、特段好きな花がある。それは、赤薔薇と白薔薇だ。
好んでいる理由は花言葉にある。
赤薔薇の花言葉は愛。私が妹に向ける愛情を代わりに注いであげることにより失われたものを補完している。
そして、白薔薇の花言葉は純潔。妹に相応しい花言葉であり、白薔薇が咲き誇っている姿はとても美しい。
この2種類の薔薇を愛でることで私の空になった器を日々満たそうとしている。実際、満たされたと思うことはこれまでに一度もなかったし、これからもないだろう。だが、何もしないよりは幾分かマシだと思うから今日もこうして花壇を前にして立っている。
いつもは赤と白が交互に咲く美しい光景なのだが、そこに今日は一輪の異なった色の花が凛々と佇んでいた。
「あ、青薔薇だ」
青薔薇は他の色の薔薇と同じく違った美しさを放つ。だが、その美しさとは裏腹に周りに咲く花の魔力を吸い取ってしまうのだ。生きとし生けるもの全てに宿る魔力だが、それを吸い取る植物となると青薔薇の他には存在しない。そして、この青薔薇は他の花と違い花粉や胞子を生成しない。生殖機能を持ち合わせていないのだ。じゃあどうして存在するのか? それは、白薔薇から突然変異を引き起こすためだ。そして、変異した青薔薇は周りの植物の魔力を吸い取り枯れさせてしまう。
そのような性質を持つため、青薔薇が植生されているような姿は未だに発見されていないらしい。青薔薇が吸い取る対象は同種である青薔薇も例外ではない。
「早く摘み取らなきゃ」
周りの植物を枯らす原因となるものは早く摘み取らなければ私の心の器が壊れてしまう。なので、赤薔薇と白薔薇を踏まないよう細心の注意を払って青薔薇の下まで進んだ。そして、私は青薔薇を摘み取ると氷漬けにし、お父様へと渡した。青薔薇はその性質が故に、魔法の触媒としてはとても優秀で数も少ないことから高値で取引されるためだ。
薔薇の安全を守ると、再び眺めに向かった。そして、しばらくの間無心で薔薇を見つめていると、家と家を隔てる柵の向こう側から声がした。
「ねぇサリー! ちょっとサリー聞いている!? 貴女の妹が大変なことになっているわよ!」
「え?」
「貴女の妹が聖女を騙り王国の民を騙した罪で処刑されることになっているわよ!」
「嘘……でしょ……」
「ほら! これを読んで!」
そうして幼い頃からの親友から見せられた一枚の紙には彼女が言っていたことが書かれていた。
「嘘だ……」
「大丈夫?」
「大丈夫なわけないじゃない!」
「ご、ごめんね」
私がショックでよろけてしまったのを受け止めてくれたが、当たり前のことを聞かれたのでついカッとなって怒鳴ってしまった。
「どうしよう……妹を助けなくちゃ……」
「無理だよ! あの娘は今この王国でももっとも堅牢な牢獄で捕らえられているのよ! 貴女の実力じゃ行っても無駄死にするだけよ! それに、もし助けられたとしても貴女達はお尋ね者になるのよ! 私はそれが我慢できない! お願いだから……止めて……」
「どうすれば……どうすれば妹は助かるの?」
「……無理なのよ……」
「へ?」
「だから! 無理だってさっき説明したじゃない! 私は貴女に生きていて欲しいの! だから……諦めて……」
その言葉を聞いた後のことは良く覚えていなかった。起きたら見知った天井が見えたことから気絶したのだと思う。
妹が処刑されるまでに時間はあるだろう。だから、直ぐに助けに行こうとベッドから体を起こしたが、先程親友に言われたことを思い出した。私の力じゃ助け出すことは出来ないと悲痛な顔で言われた。その顔を思い出すと足を動かすことは出来なかった。
◇◇◇
今日も花壇の前に突っ立っていた。普段通りだが、今日はいつもとは違う。悪い意味で特別な日だ。
妹が処刑されてから既に一年間経過した。あれから、私は妹を助けるために動くことはなかった。親友の言葉が私を呪詛のように縛りつけた。いや、違う。言い訳だ。私は自分の命可愛さに妹を助けに行くことが出来なかった。無駄死にしたくなかった。大好きな妹を殺してまで自分の命を取ったのだ。
大して人のためにならない私の命を生かすために妹の命を奪ったのだ。
大好きな人のために命を投げ出すことが出来なかった自分に後悔し、罪悪感で押し潰されそうになった。
それでも、私は生きていた。妹と同じ場所に旅立つ勇気が出来なかった。だから、今日も心の埋め合わせをするためにこうして赤薔薇と白薔薇を眺めている。
でも、いい加減罪悪感に苛まれる日々も疲れた。そろそろ妹の元へ向かう時が来たのかもしれない。もしかしたら妹とは違う場所で罪を償うことになるかもしれないが誰からも責められずただ同情されるよりは幾分か心も晴れるだろう。
「あ、青薔薇だ……」
一年前に初めて見て以来、青薔薇を目にすることはなかったが運命の悪戯なのか去年と同じ、花壇の真ん中で忌々しくも綺麗に咲き誇っていた。これも天からの思し召しかもしれない。私の命を神様に返上する時も来たのかもしれない。そう思っていると手は既に青薔薇を掴み取っていた。
一年前は氷漬けにしたが、今はそんなことをするつもりはなかった。私は青薔薇を口へ放り込むと咀嚼をし、胃袋へと流し込んだ。
「これでやっと救われる……待っててね……」
◇◇◇
「お婆ちゃん! 今日はこの本を読んで!」
小さな男の子は両手で本を抱き寄せ持ってきていた。その本は他の本と違い、薄汚れておらず、まるで新品のようだった。
「いいのかい? 本当にそれで」
「うん! 他の本は飽きちゃったの。だから、これを読んで欲しいの!」
老婆は少年の言葉に難色を示したが、最後には少年の純真無垢な笑顔に押し負け本を手に取って開いた。すると、少年は老婆が横たわっていたベッドの上へよじ登り、隣へと座った。
「じゃあ読むよ」
「うん!」
『むかしむかし、あるところに1人のわる〜い魔女がいました。その魔女は山奥に住んでおり、人とはあまり仲良くしないような生活をしておりました。その魔女は人を避け、自ら山奥へ住んでいましたが、近くの村の人々は魔女と仲良くなりたいと思い、毎日毎日、魔女の家の前まで訪れ声をかけました。しかし、魔女は一向に村の人に姿を見せませんでした。しかし、来る日も来る日も、人は魔女の家を訪れてくるので魔女はとうとう村の人達の前に姿を現しました。そこで、村の人の中の長はこう言いました。
「今度、私達の村でお祭りを開くので来ませんか?」
と魔女を誘いました。
祭りの日、魔女は村へと向かいました。村の人達は魔女を快く迎え入れ一緒にお祭りを楽しみました。そして、祭りも終わり皆が晴れやかな顔をしている時に魔女はこう言いました。
「村の皆様、本日は私を誘っていただきありがとうございました。このような愉快なことをするのは生まれて初めてで御座います。つきましては私も皆様にささやかな出し物をしたいと思いますがよろしいでしょうか」
村の人々は歓声を行い魔女の問いを快諾しました。それを見た魔女は嬉しそうな顔をし天に向かって手を伸ばしました。すると、あたり一面に赤と白が混在する美しい景色が作り出されました。
村の人々はその景色を見ると大いに喜びました。』おしまい」
「おもしろかったー。でもなぁ……なんかちがーう」
「……そうだね。今度は英雄の物語にしようか。何が聞きたいかい?」
「うーん……じゃあ、このお話がいいな! 赤色と白色が好きな聖女!」