商業の街〜困窮〜
実は露天の物祭りごとを含めても滅多に食べないんです。
朝食を食べ終えたウェルは荷物を店主に預け外に出た。すると目の前には多くの行き交う人と、多くの露店が所狭しと並んでいるのが視界に飛び込んできた。
「すごいなこれは…」
露店の人間の声と賑わう声が折り重なり、一種の祭典のようにさえ思える光景は多少の驚きと一種の恐怖さえ感じたウェルは身震いした。
驚きは催し物がある訳でもないのに、この数の露店は人生で初めて目にするることと……値段の高さだ。正直売りたいのか疑問に思うほど高い。
そして恐怖の理由は、宿屋から少し離れたところを歩いている時に感じざるおえない光景……明らかに露店の人間が不衛生極まりない格好で覇気を感じないことだ。声も細く商品を陳列する手は震えていておぼつかない。
「(宿屋の近くの人達とは正反対過ぎないか……?それに……料金が高いようにも思える)」
少し歩いて街を散策していると目の前で少女が買い物をしているところに遭遇する。
「おじさんこれください」
「悪いがこれ昨日までと違って値段上がったんだが金は足りるか?」
少女はそう言われ握りしめていた小銭を露店主へ渡した。
「あー、んと……足りねえな」
「え、でもこれしかない」
「足りないもんは足りない、だからこれ持ってほか行け」
そういう店主の手元の動きがふとウェルの目に入った。返す際に少女の目線が低いことをいいことに、返す金を別の手で握り少女へ突き出す。元々握っていた手には小銭が光って見える。
「これは……」
考えより行動が早く、少女のそばにいきウェルは屈んで少女に声をかける。
「幾ら足りなかったんだい?」
少女はウェルへ不信感を抱くことはなく、計算もできないのか小銭を握っている両手をウェルに差し出す。
「えっと……店主さんそれいくらなの?薬草でしょ?」
「うちじゃ小銅貨90枚だ」
「で?この子の持ってきた金額は?」
この時店主は明らかに面倒くさいやつと言わんばかりの顔を見せてくるが笑顔で返してくる。
「80枚だったな」
「ふーん。今この子の握ってるの69枚だが?」
店主から笑顔が消える。だんだん目が死んでいく。
「だから?それがなんだってんだ?」
「いくら自分の商売が右肩上がりじゃないとしても、これは立派な犯罪だ」
「返せばいいんだろ?ハイハイ」
店主は握っていた小銭を渡してくる。
「それじゃ許せないんだわ、子供騙してそういうことするやつは」
「返してんだかろ!?他所者が口出すなよ」
店主は商品を陳列してるテーブルから身を乗り出し、ウェルの胸ぐらを掴んだ。
「やめろ。汚れる、ついでに臭い」
「てめえには分かんねえよ!俺らの苦しさなんてよ!」
「苦しいからって―――」
ウェルは店主の左手の手首を左手と肘を右手で握り、身体をひねると同時に勢いで持ち上げ露天の外へと引きずり出し、そして地面へと投げつける。
店主は今の行動内で肘を痛めたのだろう。もがくが関係なく踏みつけウェルはこう告げた。
「客を不幸にし、客の金を盗んでるなら死んだ方がいい。商人失格だ」
流石に騒ぎを聞き人伝に兵士を誰か呼んだのか駆け付けてくる兵士へ店主を突き出し理由を説明し、
迷惑をかけたことと商品に関してはそちらで処分をと言われた。なぜそこを任せられるのかがウェルは謎のままだが、今それはどうでもいいということしかない。彼の頭の中はひとつのことでいっぱいだった。
「(悪目立ちした……くそ……目をつけられなきゃいいが……)」
頭を抱えつつも薬草は少女へ全て渡し、少女は笑顔でお辞儀をして家路について行った。
ウェルは後悔と初の揉め事で疲れ、露天の前で座り込んだのだった……。
これ実際にあった出来事をすごく変換して作りました。
脚色ってやつですかね。