商業の街〜疑念〜
朝ごはん食べれないこと多いよねって思う
初めての旅での夜明け、ウェルは朝日が昇る前に目が覚めていた。
理由としては寝具が硬かったから眠りが浅かったためだ。
「はあ……これは慣れなきゃだよなー」
1人つぶやき外出の準備をする際、腰に狩り用に持ってきたダガーを忍ばせ着替えて荷をまとめ店主のいる受付へ向かった。
「すみませーん」
ドタドタと受付の奥から足音がし店主が顔をだす。
「おう、兄ちゃん朝早いな?朝ごはんか?」
「あ、朝もあるんですか?てっきり夕食だけかと……」
「なーに言ってんだ一日の始まりは朝ごはんで決まるんだぞ!食ってけ」
店主に導かれ部屋がある方と逆の通路へ案内されると、そこにはチラホラと人が居て食事をとっていた。
「朝は軽めがいいだろうが、何があるかわからんから食えるだけ食えよ!米とパンどっちがいい?それと肉と魚選べよ」
「じゃあ米と魚で」
「サッパリで胃に優しいチョイスでいいと思うぜ!油もきっちり落ちるように焼いて来てやるよ!荷物は飯の後預かるぜ」
店主は言い終えると足早にキッチンがあるのであろう方向へ消えていった。
他にいる人達は黙々と食事をし、食べ終えるとお金を置いていく人から荷の手入れをする人、街の朝刊を読む人と様々いる。
なれない空気のためソワソワとしながら、ウェルはこの後の行動をメモにとりつつ料理を待った。
「さてと、とりあえず露店を見て回ろう。そして街の状態を見てみよう、自国よりいい所は吸収し悪いところは排除していこう」
上着のポケットから手帳を取り出して、【学ぶべきもの】と【自国との比較】と記してテーブルの上に置いた。
そして【学ぶべきもの】にそうそうと記したのは表情の豊かさ。
店主を見ていた彼は感じていた。困っている顔、真剣な顔、眉毛の動き、口角の上がり下がりでの表情の豊かさを。
メモに残し終え席にまだ届かない食事を待つ中、聞こえてくる会話に耳を傾ける。
「今朝死んじまったやつが出たとよ」
「またか?やっぱ噂は本当なのかもな税がキツイってのは」
「ここの領主の貴族様は自分だけ肥えてるって言うしな、成功すれば商人として売れると言うが、実際問題生き残ることが出来なきゃ意味無いもんな?」
「その通りだ。同じ商品を売ってる奴を蹴落とす為に安くして、自身の首を絞めて飯は食えない宿にも泊まれない。雨風にも晒されて生き抜く……無理に決まってら」
「(装いは普通に生活していそうに見えるが、やけに詳しい口ぶりなので商人になんらか関係がある立ち位置であろう)」
話をしていた2人は食事を終えて、店を出ていく。ほのひとりが足を引き摺っていることに気がついたがウェルはより一層の不信感を抱くのだった。
「(あの引きずり方は捻挫?しかも軽度ではないだろ……明らかにすり足と言うには引きずり過ぎだ。医者にも行けないのだろうか?……いや、気にしちゃいけないのだろう簡単に俺が踏み込んでいい領域じゃない)」
「おう、またせたな!サーモンの炙り焼きと玄米。サービスで海藻のサラダ付けとくぜ……ってなんか考え事か?」
店主は難しい顔をしたウェルを見て問いかけるが、ウェルは首を振った。
「考え事って言うよりは……悩み?疑念?なんだろう……なんかモヤッとするんだ」
「若いうちは悩んどけ、俺の歳で悩むってなると苦しいもんだからな!」
笑っている店主は、日々を楽しく生活できていることを表すような、笑顔と捉えることが出来るが、表情や感情に乏しく育ったためウェルは愛想笑いで返したのだった。
怪我を治さない理由って絶対にない
なのに何故?