商業の街〜商人〜
旅先での料理って何故か美味しく感じる
なぜだろう?
夕飯を少し心待ちに荷物を整理していると、部屋の戸がノックされ先程の店主が料理を片手に入室してきた。
「よう、兄ちゃん。お待ちかねのご飯だぜ?……って中にそんなに荷物を入れてたのか?」
店主が驚いた理由は、背負って入って来た荷物の中に、様々な道具一式や着替えが入っていたことに驚いて出た言葉だった。
「まあ、必要最低限ですけど……ところで―――」
ウェルは店主の持ってきた香ばしい匂いに腹の虫は鳴りっぱなしだった。
「おお、すまんな。羊肉の香草焼きとそれに合うパンと山菜スープだ」
「羊肉とは珍しいですね」
「この街じゃ羊がメインなんだ。牛と豚よりも羊の方が商人には商売の糧になるってのが主な理由。主じゃない理由は牛や豚より経費が軽く楽に仕入れや売り出しができるから」
その話を聞きながらウェルは食事を貪る。パンも質がよく、山菜も新鮮とは言い難いが風味がしっかりありスープにいいダシが出ている。
「美味しいですね」
「だろ?うちはそれを売りにしてる。そうだ兄ちゃんもし明日街を回るなら荷物は俺に預けてけ金庫に入れとく……と言いたいが荷物がでかいから、カウンター下に置いてみといてやる」
「それはなぜですか?」
「いや普通に疲れるだろ、それにこの街は褒めれるほど治安がいいわけじゃないからな」
難しい顔をする店主にウェルは疑問が浮かんだが、その疑問には店主がすぐに口を開いた。
「この街は飢えてるんだ。自分の名が売れること。儲かること。生きることに……この街に入った時に気づいたか?露店の数多かったろ」
ウェルは疲れもあって宿を一直線に歩いたため、露店になど全くもって気づかなかったので首を横に振った。
「あ、兄ちゃんきたの日没前か……それじゃ街の入口前はもう露店もやってないし……まあ明日見ればわかる。よーく見てみろ商人達を」
それだけ言って部屋を出ていき戸を閉める前に、食器類はとの前に置いといてくれば後で回収する。と言い残していった。
「治安が悪いのか……用心は必要そうだな」
話していて少し冷めてしまった料理だったが、自分の家で食べる料理よりもハッキリと味がして作り手の気持ちが伝わる料理だった―――。
治安が悪いところって絶対なにか原因があるけど、決して自分たちじゃ関与できないよね……。