家出〜歩み〜
前回歩み始めた道での出来事。
不自由を感じ飛び出た。
彼の旅の始まり。
青年は明確な目的地なく歩を進める。
「どうしたもんかなー…このまま行き当たりもいいけど」
荷物は背負っている物だけ野宿に必要な道具を最低限入れ、資金や着替えといったもので大きく容量を占めてしまっているため、食料は少なく限りがある。
歩き始めて日が高くなり始めた辺りで、青年は歩いていた道から少し外れ休憩をとることにし、持っている地図を広げて中央にある自分の故郷を起点にどれだけ進んだか目算を付けつつ、軽食として用意した干し肉を一欠片手に取り食べ始める。
「もう少しで村なり見えてもいい頃だと思うんだけどな……」
等とブツブツと自問してると、ゴトゴトと荷馬車の向かってくる音が聞こえ始めた。
「お!ツイてる。行商人かもしれない!」
休んでいた場所から立ち上がり青年は近づいてくる馬車に手を振り、御者の老人が馬を静止し声をかけてきてくれた。
「どうした、迷子か?」
合ってはいるため頷く青年に御者は笑みを見せる。
「ははは。冗談で言ったが本当だったか……見た感じ旅人か?」
「はい。朝方に王国の方を出てきまして、ここまで来たのですが……」
老人は再度笑みを浮かべ頷いた。
「この王国周辺は1日歩いても集落や村といったものは見つからんぞ?」
「そうなんですか……ちなみに近場で人が多いところは、この地図でいうとどこに当たりますかね?」
青年は懐の地図を取りだし老人に見せると指をさしてくれた。
「ここかな、俺はそっちとはそれた方向に向かうんだが、このまま真っ直ぐ道沿いに行けば看板がある。それの通りに行けば問題なく着くぞ」
「ありがとうございます!」
「いやいや旅の人には親切にするのが御者ってもんですよ。ただ今回は荷物多くて乗せてやれんけど、もし次会うことあればぜひ乗って道を進むのもおすすめだから……その時はよろしくな?」
老人は手を差し伸べてニコッと真っ白な歯が見えるほど気持ちのいい笑顔を見せる。
「ええ、その時はぜひお願いいたいたします。俺はウェルと申します」
手を握り返しつつ青年は名乗った。
「そういや名乗ってなかったな、俺はジェルマンだ。兄ちゃん日が高くなると暑くなるなるから上着は脱いだ方がいいぞ。まだ4の季節と言っても風がないと少しばかり汗かくからな。じゃあ達者でな」
ジェルマンは馬を叩き馬車を進めていった。
「咄嗟に名前嘘ついちまったな……愛称だから呼ばれちゃいるがーまあいいか」
青年は言われた通り上着を脱いで荷物にまとめ入れ、再度背負い歩き始める。
その瞬間通り抜ける勢いのある風に目を瞑るが、ジェルマン老人の言った通り涼しく気持ちのいい風だった。
初めての旅、初めての出会いで高鳴る鼓動で歩みを進める足は軽い。
御者に教えてもらった道を次回は歩みます。
確実に進む彼の旅。
また見て貰えると嬉しく思います!